薬膳科学研究所

メッセージ

研究所長メッセージ ~YAKUZENの提唱

科学の「科」は「分析」することを意味しており、20世紀初頭にビタミンが発見されて以来、栄養学は分析を中心に発展してきました。近年では栄養素の摂取にともなって起こる生命現象を分子生物学的手法を用いて解明しようとする分子栄養学が新たな分野を切り開きつつあります。それは集団を対象としたこれまでの栄養学から個人を対象とした栄養学を推進する役割を担っています。一方、薬膳の基盤である中医学は、古来、人の体質をもとに養生法、治療法を発展させてきました。この養生法の中の1つである食養生が薬膳です。薬膳という文字は中国で古くから存在していたわけではなく、1982年「薬膳食譜集錦」という料理書に初めて使用されたものです。私たちは薬膳を、「中医学の理論をもとに、気候・風土、季節、および個人の体質に合った食品を選び、それを組み合わせ、色、香り、味に満足できる食事」と定義しています。中国では生薬(漢方薬)も利用するようになっていますが、日本では管理栄養士・栄養士が利用できる食品を取り上げています。また、現代栄養学が進めているミクロのアプローチとは対照的に、気候・風土、季節というマクロの視点を取り入れています。これは人が生存するためにはいかに自然環境に適応していくのかという思想が中医学の根底に存在していると考えるからです。

薬膳の科学的アプローチとはいかなるものか。1000年以上前から発展してきた中医学には当然栄養素など化学的成分の視点で食品を捉えることはありません。五味(甘味、酸味、苦味、辛味、鹹味)、五性(熱性、温性、平、涼性、寒性)、帰経という独自の視点で食品の持つ性質を考察しています。さらに、効能として清熱、理気、補気、化痰、安神、滋陰、瀉下など薬効的な作用も考慮しています。これらの性質や効能は主に臨床的知見から得られたものですが、現代医学や栄養学にも通じるところがあります。現在炎症は多くの病気の発症に関連するとして、それを抑える抗炎症作用のある食品成分が世界的に注目されていますが、これは清熱作用の一部と考えられ、中医学ではこの機能性が食品に存在することを見抜いていました。生活習慣病激増の現代では、食を通して健康増進、疾病予防を目指す政策が推進されていますが、もとより薬膳の目標もここにあります。そのための戦略として、経験知の薬膳と先端的な現代栄養学を有機的に統合したYAKUZENを構築していきたいと考えております。そしてこれまで進めてきた産学官連携事業をさらに推進させるともに、薬膳に関する教育を展開させていく所存です。

薬膳科学研究所長

德井 敎孝
(教授)

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