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貝原益軒 和俗童子訓
和俗童子訓は宝永7年(1710)、貝原益軒81才のときに書かれたものである。
養生訓が書かれる3年前のことである。
本書は本邦における教育論のさきがけと云うべきものである。しかし、単に本邦最初であるというだけでなく、幼児教育の重要性を強調した点で世界的にいっても先駆的なものである。
ヨーロッパで最初に幼児教育の重要性に着目したのはコメニウスであると云われ、17世紀のことであるが、貝原益軒(1630-1714)はほぼ同じ時代に同じ考えの本書を発表している。
本書の特徴は、児童の発展に応じた教育法(随年教法)である。まず、ものを食べ、ものを云いはじめるときからの教育の必要を述べ、過保護をいましめている。さらに幼児教育の詳細なカリキュラムが与えられている。
本書で論じられているのは特殊な知識人を対象とするものではなく、農工商をふくむ四民を対象としている。その点で本書はその後に発展した寺子屋教育および明治以後の小学校教育の基礎となったものと考えられる。
本アーカイブにはテキストおよびイメージの2種類の和俗童子訓がおさめられている。
原書は当時の一般読者のことを考えて漢字をなるべく使わないようにしている。このことは現在の読者にとって、本書を養生訓などよりも読みにくくしている。
岩波文庫本のように原著に忠実なテキスト化も試みたが、読みにくいし、仮名遣いが場所により異なる(たとえば、「おしゆる」が25回、「をしゆる」が30回あり、「をしへ」も「おしえ」も「をしえ」もある。)ので、ふつう漢字で書く言葉は思い切って漢字に置き換えた中村学園校訂テキスト(92KB) を提供することにした。
同じ理由で、塚本哲三氏校注の有朋堂文庫「益軒十訓」(明治44年)をイメージで提供することにした。仮名を漢字で置き換えて読みやすくなっており、頭注が有用だからである。
参考まで原本に近いテキストをノートとして付け加えてある。
本書の構成は次の通りである。
巻之一および巻之二は総論であり、巻之三は年齢別のカリキュラムおよび読書法、巻之四は手習法、巻之五は女子教育論である。PDFについてはPDFファイルの利用方法を参照されたい。
本書を読むにあたって、益軒は黒田藩の儒学者であり、封建制度のきびしい江戸時代に書かれたものであることを忘れてはならない。このことが顕著に示されているのは巻之五の女子教育論である。
この内容をもとにしてその後「女大学」が出版され、封建制における家族制度の維持に貢献した。其の点で、現在の観点にすれば巻之五は女子教育の反面教師の役割を果たすもので、男女の差別問題を論ずるにあたっても重要な文献と云うことができよう。
入力にあたっては益軒会編集の益軒全集(明治44年)、塚本哲三校注有朋堂文庫本「益軒十訓」(明治44年)、岩波文庫本(石川 謙 校訂:1961年)を底本とし、松田道雄先生による現代語訳(中央公論社,日本の名著)を参考にした。
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