中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
エピジェネティクス

教えてくれたのは

    末武 勲
    栄養科学部 栄養科学科末武 勲教授

    大阪大学大学院理学研究科生理学専攻後期課程修了、博士(理学)を取得。日本学術振興会特別研究員(DC2,PD)を務めた後、大阪大学蛋白質研究所助手、准教授(エピジェネティクス研究室)。その後、甲子園大学栄養学部教授、大阪大学医学研究科招聘教授などを務め、2020年4月より中村学園大学栄養科学部栄養科学科教授に就任。

遺伝についての新しい仕組み『エピジェネティクス』って何ですか?
DNAの情報を変えることなく、遺伝子の働きを決める仕組みのことです。

例えば、全く同じDNAを持つ一卵性双生児でも、一人は大人しくて一人は活発だったりと個性が違います。それはまさに、環境などの影響によって遺伝子の働きは異なっていくのだという証拠。その仕組みを『エピジェネティクス』といいます。
DNAは私たちの細胞の核の中に収納されているひも状のものですが、その長さはなんと2メートル。そこに刻まれた遺伝子情報のうち、人間の体をつくる設計図の部分を遺伝子といいます。遺伝子という膨大な設計図の中のどの部分を表に出すのか。それを制御・伝達する仕組みのことをエピジェネティクスといいます。

親から遺伝した『生まれつきの才能』って努力しても変わらないのですか?
育つ環境や努力で新たな才能が育つ可能性も。

両親から受け継いだ遺伝子に加えて、環境や教育、努力によって個性は変わっていくもの。新たな才能が育つ可能性は十分にあることがエピジェネティクスの考え方からもわかります。実は、「生まれながらの女王蜂はいない」という話をご存知でしょうか?蜂はロイヤルゼリーを与えられたかどうかで遺伝子の働きが変わり、その後、女王蜂になるか働き蜂になるかが決まります。人間も育つ環境によって遺伝子の働きが変わるため、環境はとても大切なのです。

お母さんの食生活(栄養状態)がお腹の中の赤ちゃんに影響するって本当ですか?
子どもの健康にとって妊娠期の母親の栄養バランスは重要です。

育つ環境が大切だという話をしましたが、それはお母さんのお腹にいる時から始まっています。お母さんの栄養が足りないと、胎児の遺伝子は少しの栄養を効率よくエネルギー源にできるよう働き、その環境に適応する体になってしまうのです。そのため、生まれてから充分に栄養が摂れるようになると肥満などの生活習慣病になりやすいことがわかっています。女性のみなさんは妊娠中もしっかり栄養を摂取してくださいね。