教えてくれたのは

県立長崎シーボルト大学看護栄養学部卒業、長崎県立大学から博士(栄養学)の学位を授与。長崎県立大学助教、名古屋女子大学講師等を経て、2020年4月より現職。専門は保健栄養学、食品機能学、生活科学。難消化性糖質のエネルギー評価をはじめとした生体利用性や様々な生理機能の研究、包括的定量法の開発に取り組み、ヒトの健康維持・増進に貢献している。
- 食物繊維はヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化成分を指し、整腸作用があり生活習慣病の予防にも有効です。
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食物繊維は「ヒトの消化酵素で消化されない(胃や小腸で消化されずそのまま大腸まで到達する)食品中の難消化成分の総体」とされ、難消化性オリゴ糖類(以下オリゴ糖)や糖アルコールなども含むと捉えられています。食物繊維は構造上は砂糖やデンプンと同じ糖質の仲間になります。
その働きとしては、まず、便通を良くして腸内環境を整えることが挙げられます。また栄養素の吸収の速度を緩やかにし食後血糖値の上昇を抑える、コレステロールを吸着して体外に排出しコレステロール値を低下させるなどの作用があり、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の予防にも貢献します。食物繊維は健康の保持・増進に欠かせない重要な成分として研究が活発に行われています。
- 腸内細菌の餌になり短鎖脂肪酸やビタミン類などを合成することや、他の栄養成分とのペアリングで体に良い成分の吸収率がアップすることが分かりました。
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食物繊維の中でもオリゴ糖は健康機能が高いと注目されています。腸内細菌がオリゴ糖を食べる(発酵する)と、代謝物質である短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸等)などが産生され、それらが骨の健康維持や認知機能低下の抑制などに働くことが示されています。また短鎖脂肪酸だけでなく、胎児の成長に不可欠な葉酸やタンパク質代謝に必要なビタミンB6などの産生が増加されることも明らかにしています。将来的にはサプリメントに頼らず自身の腸内で必要な栄養素を作り出す自給自足型の健康づくりが実現するかもしれません。
体に良いとされるポリフェノールやフラボノイドは単独では体に吸収されにくい性質を持ちますが、オリゴ糖と一緒に摂取すると吸収率が上がるというデータも出ています。
食物繊維は、野菜類、豆類、穀物類、きのこ類、海藻類などに多く含まれています。あまり難しく考えず、白米に押し麦を混ぜたり、粉末やシロップとして市販されているオリゴ糖を砂糖の代わりに料理や飲み物に利用したり、気軽に摂取してみてはいかがでしょうか。
- 健康面だけでなく、フードロス削減や農業の活性化も踏まえた商品開発や女性の尿路感染症の予防を目指した研究が進んでいます。
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食品の製造過程で廃棄されている「大麦の糠」や「バガス(サトウキビの搾りかす)」は食物繊維の宝庫です。これらを活用し、ヒトの健康に寄与すると同時に、フードロス削減や6次産業化による農業活性に繋げる機能性スイーツの開発が進行中です。苦味の強い大麦の糠とおいしさの両立が難しい中、試行錯誤を重ね「大麦の糠 特製焼きドーナツ」がすでに完成しています。バガスは鉄分も豊富な点も魅力です。若年女性に多い鉄欠乏症による貧血の改善にもうってつけのバガス入りアイスクリームが試作段階に入っています。
また、摂取しても代謝されず約30%がそのまま尿の中に排出されるという不思議な糖質に着目し、その機能を利用して尿路感染症など女性特有のデリケートゾーンのトラブル予防を目指した研究も行っています。
- 現行の食物繊維の測定方法では、食物繊維ではない成分を食物繊維と認識するといった欠陥があり、20年以上前から正しい測り方の研究を続けています。
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世界中で採用されている現在の食物繊維の測定ルールでは、消化される糖(血糖値を上昇させる)を食物繊維だと誤認してしまうなど、一部の糖質を正しく測れていないという問題があります。それは、食品のエネルギー計算にも影響を与え、実際には1gあたり4kcalのエネルギーになる糖質が食物繊維と判定されると、低カロリー(例:1gあたり2kcal)で換算されてしまいます。すなわち、栄養成分表示が正確ではない商品が存在するのです。これは、消費者が期待する健康効果を損なう恐れがあるだけでなく、企業にとっても損害(見込み通りに機能性が出ないなど)を招くリスクとなります。
私自身は20年以上も食物繊維の正しい測り方の研究に取り組んでいます。ブタの小腸粘膜から抽出した酵素や独自の酵素カクテルを用いて、ヒトの消化管の働きを試験管の中で忠実に再現。あらゆる食物繊維を正確に測り分ける包括的な測定法を開発しています。食品パッケージの栄養成分表示の正確性を裏付け、消費者が真に健康に良い食品を選択可能にするための、社会的に重要な根幹を成す研究だと思っています。
