中村学園大学・中村学園大学短期大学部

「国内フードビジネス研修Ⅰ」カカオ研究所様を訪問しました

2025年8月28日

「国内フードビジネス研修Ⅰ」は、日本の食文化を支える調味料や伝統料理の現場を訪問するフィールドワークの演習科目です。生産、加工、流通、販売の現場での体験を通じて、食産業の課題や、新しい付加価値について理解を深めます。

以下は、カカオ研究所(福岡県飯塚市)様を訪問した学生のレポートです。

今日は福岡県飯塚市にある「カカオ研究所」に訪問させていただきました。ここは九州で初めてのBean to Bar チョコレート専門店であり、カカオ豆の選定から焙煎、精錬、成形に至るまでの工程を一貫して行っている施設だそうです。一般的に流通しているチョコレートは、大手メーカーが海外で加工されたカカオマスを仕入れて製造することが多いと聞きますが、カカオ研究所では豆そのものからチョコレートを作り上げている点に大きな特徴があります。訪問前は「チョコレートは身近なお菓子」という程度の認識でしたが、実際に現場を見学し、説明を聞くことで、その奥深さと作り手の強い思いを実感することができました。

特に印象に残ったのは、店主の方の行動力と探究心です。当初はドライ野菜の事業を考えていたそうですが、チョコレートに興味を持ち、自らカカオ産地であるベトナムへ足を運び、実際に発酵や乾燥の工程を見て学びながら仕入れを始められたと伺いました。一般的にはカカオといえばガーナやエクアドルといった主要産地を思い浮かべますが、あえてベトナムを選ばれていることに独自性を感じました。農園との直接的なつながりを持ちながら、品質を自らの目で確かめ、納得できるものだけを使用しているという姿勢には強いこだわりを感じましたし、その積み重ねが商品に確かな信頼を与えているのだと理解しました。

実際にチョコレートを試食させていただきました。私はこれまで、市販の甘いチョコレートしか食べたことがありませんでしたが、ここではカカオ含有率の高い製品を味わうことができました。100%のチョコレートは非常に苦味が強く、普段のチョコレートとは全く異なる印象を受けました。しかし苦いだけではなく、焙煎豆の香ばしさや深みも感じられ、「カカオそのものの味」を知る貴重な体験になりました。また、80%以上のチョコレートでは酸味があって、発酵による複雑な風味を感じました。いつも食べているの「甘くて食べやすい」チョコレートでは気づけなかった味わいがあるなと思いました。こうした違いは、産地や加工方法によって大きく変わることを学び、カカオが持つ可能性の大きさを実感しました。

さらに、店内の商品には一つひとつ丁寧な説明が添えられており、産地や特徴が分かりやすく記されていました。その説明を読んでから食べると味だけでなく背景にある物語にも触れることができ、商品への理解と愛着が深まりました。単なる「お菓子」としてのチョコレートではなく、農園の人々の努力や店主の研究の積み重ねが形になっているんだなと実感しました。

また、カカオ研究所は国内にとどまらず、海外の展示会にも出展されているそうです。地方の一店舗でありながら、自らの研究成果と商品を世界に発信し、評価を受けている姿勢は非常に印象的でした。地元に根ざしながらも、国際的な視野を持ち、チョコレートを追求していく姿勢がすごく印象的でした。食品製造にとどまらず、一つの文化や価値観を世界へ伝える活動であり、学びがたくさんありました。

今回の訪問を通して、私はチョコレートの持つ奥深さを改めて知りました。身近な食品であるにもかかわらず、その背景には栽培、発酵、焙煎といった多くの工程があり、さらに作り手の強い思いが込められていることを学びました。今後、日常でチョコレートを手に取る際には、その味わいだけでなく、どのような人の努力やこだわりが込められているのかという背景にも目を向けたいと考えています。今回の経験は、私にとって食べ物を新しい視点から捉えるきっかけとなり、とても貴重な学びになりました。

フード・マネジメント学科1年 林 来春