中村学園大学・中村学園大学短期大学部

留学による異文化対応力の変化を可視化 言語を皆で楽しみ学べる 新たな教育方法の探究も。
教育学部 児童幼児教育学科佐々木 有紀 教授
PROFILE慶應義塾大学文学部英米文学科・同文学研究科修士課程修了後、渡米。ボストン大学教育学部教育学修士課程(英語科教育法)修了・同博士課程単位習得満期退学。慶應義塾大学湘南藤沢中等部・高等部英語科教諭、文部科学省生涯学習局調査企画課外国調査係勤務を経て、国際教養大学、福岡大学、佐賀大学等で教鞭を取る。2024年4月より現職。英語教育の他、異文化対応力育成、インクルーシブな言語教育の研究に取り組んでいる。
英語教育や多岐にわたる留学指導などに取り組んできた佐々木 有紀 教授。
注力している研究やゼミ活動などについて伺いました。
どのような研究に取り組まれているのですか。
 英語教育とともに学生の留学にまつわる様々な指導に携わってきました。その中で、海外経験をした学生は語学面だけでなく、異文化の中でどのような対応ができるようになり成長するのかに興味を持ちました。所属するグローバル人材育成教育学会の活動として、同会で開発した「異文化対応力測定尺度」を用いて、学生の留学前後にアンケート調査を実施し、その結果を検証しています。例えば、留学後は自分と違う人種や文化に対する受け止め方が肯定的になるといった面がある一方で、日本に関する知識が低下しているなどポジティブではない面があることも分かり、さらに研究を掘り下げているところです。
 学内においては、心理測定ツール「BEVI」を用い、留学前後で学生の深層心理がどう変わったかを探る研究を行っています。100個以上ある質問に答えてもらい測定するのですが、学生が帰国した約1カ月後に実施したものでは、海外に対して開かれた気持ちになる度合いが、短期留学より長期留学のほうが高くなるなど違いが見られました。また留学後には総じてジェンダーレスの意識が上がるケースが多いようです。ただ、別の大学で取ったデータでは、留学先がイスラム系の国の場合は、ジェンダーに関する考え方の変化があまりないという傾向が示されました。留学後に時間をおいて調査をするとまた違った結果が出るかもしれないので、長いスパンのデータも取って追究していきたいですね。日本に来た留学生を対象にしたリサーチにも取り組みたいと思っています。
ゼミ活動の内容について教えてください。
 幼稚園や小学校では外国ルーツのお子さんが増えていることもあり、学生時代に海外の方との交流をなるべく多く体験してほしいという思いがあります。今年度から新たに、ゼミ活動の中にオンライン協働学習「COIL」(Collaborative Online International Learning)を導入しました。ゼミ生と日本語を学んでいるスリランカの大学生がzoomを使い交流を深めています。基本は日本語、場合によっては英語を使い、自己紹介やそれぞれの国の文化の説明などを行っています。回を重ねるにつれ日本語教育や日本語学習支援にも興味が湧いてきたゼミ生もいるようです。今後、ゼミ生とスリランカの学生が一緒に何かのプロジェクトに取り組むような方向につなげていきたいです。またフィンランドからの留学生と山田ゼミの方々と一緒に、大学付属の壱岐幼稚園で、身近な遊びである鬼ごっこを通して、子どもたちに日本語、英語、フィンランド語の3つの言語に触れてもらう活動も行いました。
 学生には卒業研究において、自身が興味のあることを徹底的に調べて研究し、それをきちんと人に伝えて、「勉強して面白かった」と感じてほしいです。そのことを大事にしながらゼミ活動を進めています。
本当に英語が好きで、自信を持って英語や外国語の教育に携われる学生を育て続けていきたい
今後の抱負をお聞かせください。
 英語教育が専門ですので、本当に英語が好きで、自信を持って英語や外国語の教育に携われる学生を育て続けていきたいです。加えて、本学部の海外研修制度「グローバル教員養成プログラム」の派遣先であるオーストラリアの教育について、知識を深め現地にも足を運びたいです。
 研究においては、さらに進化させた異文化対応力測定尺度を作り始めているので、それを実用化できるように2、3年で仕上げて公開できればと考えています。また幼稚園や小学校で試験的に取ったデータにより、外国ルーツの子どもだけでなく日本人の子どもにも日本語力の低い層が見られました。外国人、日本人と区別するのではなく、英語や日本語などの言語をみんなで楽しく学べる教育法の研究にも取り組んでいけたらと思います。