中村学園大学・中村学園大学短期大学部

「売れない」悩みを解決へ。 福岡の魚の販路拡大をめざし、 魚食普及のための取り組みを
栄養科学部 フード・マネジメント学科眞次 一満 准教授
PROFILE広島大学大学院生物圏科学研究科修了。九州経済連合会職員を経て、2019年4月より現職に。専門は水産経済学、フードシステム。研究テーマは、国産水産物の消費拡大や食品の表示・トレーサビリティ(追跡可能性)、農水産物のサステナビリティ(持続可能性)。
地元の魚の販路拡大に向けた活動をはじめ、 養殖やトレーサビリティに関する研究など、 食に関するさまざまな取り組みを行う フード・マネジメント学科の眞次准教授に 研究や普段の授業についてお話を伺いました。
先生の「食」に関する 取り組みについて 教えてください 。
近年、食の課題のひとつに「魚ばなれ」が挙げられますが、福岡の卸売市場でも魚の売上が年々下がっており、関係者は頭を抱えています。私は前職で経済団体に所属し、当時から魚の販路拡大に向けた活動を行っていたので、現在も魚食普及のための取り組みに力を入れています。中でも注目しているのが、特定給食施設への提供です。福岡にある学校の学食や企業の社員食堂で地元の魚を食べてもらうことができれば、魚食普及だけでなく地産地消にもつながります。また、調べていくうちに県内の学校給食で地元の魚が使われている地域とそうでない地域があることに気づき、なぜなのかを探ってきました。そこでわかったのは、政令指定都市のように食数が多い地域は一日に大量の食材が必要になるため、地元の漁獲量では足りないということ。輸入品の冷凍食材に頼るしかなく、子どもたちにおいしい地元の魚を食べてもらうのは難しいという事情がありました。今はこの課題をクリアする方法がないかを調べているところです。  しかし、福岡の魚に関する課題はこれだけではありません。温暖化による海水温度の上昇や藻場の減少といった環境変化によって、魚が獲れなくなっているのです。加工商品をつくる際に仕方なく海外産を使う業者もいます。この状況を打破すべく養殖の産業化に向けた研究も行っています。  もうひとつ私が食に関する研究として行っているのは、ブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティシステムの構築です。食材の産地偽装がニュースで取り上げられることが度々ありますが、このシステムを使うとデータの改ざんができず流通の過程で誰かが勝手に産地を偽ることができなくなります。システムの浸透にはまだ課題が多く実現には時間がかかりますが、実現すれば生産者と消費者にだけでなく、業界全体にメリットがあるはずです。
普段の授業やゼミでは どのような活動を 行っていますか?
座学よりも学外での実習が多いのが特長です。はちみつの藤井養蜂場さんの工場を見学したり、明太子のふくやさんでお話を伺ったり、とさまざまな企業に積極的に出かけています。もちろん教科書の勉強もしますが、現場の方の話を直接聞くという体験には敵いません。実際に企業の方とお話をさせていただくことで興味の持ち方も変わってきますし、「学生気分では通用しない」と認識することで学びに対する姿勢も変わってきます。食品業界に興味を持っていたとしても、学生のほとんどは消費者目線でしかないのが残念です。さまざまな企業との出会いで、ひとつの食材や商品が消費者にたどり着くまでに、たくさんの企業や人が関わっていることを知れば、将来の目標も変わってくるのではないかと考えています。
将来の目標を尋ねると「食品の企画・開発」と答える学生が多いのですが、実際に企業の方に話を伺うことで、営業や管理業務など他の仕事にも興味を持ってもらえたら。(写真/ふくやハクハクでの明太子手作り体験の様子)
消費者目線でいるのではなく、 「食」をビジネスとして考えれば そこにさまざまな企業や人が 関わっていることがわかる。 学生にはその流れを知ってほしい。
今後の目標について 教えてください。
フード・マネジメント学科には、食が大好きな学生がたくさん入学してきます。「食の中村」と呼ばれる中村学園大学の代表として、他の大学とは一線を画す自負を持ってとことん学んでもらえたらうれしいですね。私たちはそのお手伝いをしっかりしていきたいと思います。今、フード・マネジメント学科の学生が中心となってから誕生した「フード美同好会」というサークルで、『農業女子プロジェクト(農林水産省)』のお手伝いをしてます。本学のこうした取り組みが内外に認知されるようになることも目標のひとつです。食の分野は絶対に負けない。そんな中村学園大学の特色をより引き出していけたらと思います。
農業女子の皆さんとフード美同好会がコラボし、西鉄の社員寮にあるオープンスペースで直販のイベントを企画しながら、どうしたら生産者の方の役に立てるのかを皆で考えています。