中村学園大学・中村学園大学短期大学部

シンクタンクの研究員として得た 経験とスキルを活かし 地元企業の魅力を伝えたい
短期大学部キャリア開発学科中川 敬基 准教授
PROFILE九州大学農学部卒業後、九州大学大学院生物資源環境科学府修了。在学中は農産物(現 食料)流通研究室でフードシステムや食料流通を中心とした取引のメカニズムなどの研究を行う。2006年4月に公益財団法人九州経済調査協会に入社し、調査研究部の受託調査チームに所属後、2020年4月より現職。
公益財団法人九州経済調査協会の研究員として、さまざまな調査に取り組んできた
キャリア開発学科の中川准教授にこれまでの実績や取り組み、ゼミ活動についてお話を伺いました。
九州経済調査協会でのこれまでの実績について教えてください。
九州経済調査協会はさまざまな調査研究を行うシンクタンク。私は大学院在学中からアルバイトとして勤め、修了後にそのまま研究員となって年間10本ほどの調査研究を行っていました。
研究内容には、自主研究・自主プロジェクトとして行うものと、受託調査があります。受託調査は、国や地方自治体、もしくは企業などをクライアントに、その問題意識を具現化してクライアントの代わりに調査し、新たな戦略を提案する業務で、私は企業・産業関係の受託調査を主に担当していました。年間を通して、アジア諸国を巡って九州の半導体企業をアピールしたり、IT・ヘルスケア企業やベンチャー投資機関といっしょに地域発のプロジェクト創生を手がけるなどの経験をすることができました。ほかにも、新規事業開発を行いたい企業の若手社員に対してアイデアワークショップを実施したり、JICAからの委託で、ベトナムのエビ養殖に関する調査を大牟田市の企業と共同で実施しており、これらは退職した現在も関わり続けています。
コロナ禍で叶いませんでしたが、共同研究にはゼミ生も参加してもらいたいです。私は九州経済調査協会の業務に15年間携わったことで、さまざまな地域の経済や業界について知っていることが強みです。その知識や幅広いネットワークを活かして学生たちをサポートしていきたいです。
今も続けているというベトナムでのエビ養殖に関する研究調査では、経営分析を行うだけでなく、実際に貯水池に入って作業をすることも。
普段のゼミではどのような活動を行っていますか?
キャリア開発学科の学生たちは、地元福岡で就職するケースが多いため、地元の企業について理解を深めてほしいと思っています。
ゼミでは主に地域経済をテーマに取り上げ、福岡の企業の動向や業界ごとのつながりを教えています。就職活動のために行う業界研究の入口を学ぶ内容です。それがより良い就職先との出会いにつながればうれしいですね。机の上で学ぶことも大切ですが、フィールドワークをどんどん増やしていきたいと考えており、業界訪問を行っています。昨年12月にはホテル業界への就職を志望する学生を連れて、ヒルトン福岡シーホークを訪問しました。ホテル業界の今がどうなっているのかを肌で感じるとともに、人事部の方と交流してお話を聞き有意義な時間を過ごすことができました。コロナ禍ではありますが、こうした機会を今後も増やしていけたらと考えているところです。
さらに、就職活動や社会に出てから必要な力として、人前で話をする力、表現する力、雑談力を身につけてもらうことも課題のひとつです。ゼミの開始時に皆の前で今日の出来事を2~3分で話してもらったり、ゲームを通して楽しみながら話をする練習をしたりしています。ただ話すのではなく、いかにおもしろく話すかがポイントです。この練習を通して上手に自己PRできる人になってくれたらと思います。
ヒルトン福岡シーホークにて。
産業分析などのスキル養成に加え、表現力や雑談力を養うことで、
自信を持って自己表現のできる学生を育てることが目標です。
今後の目標について教えてください。
ゼミの学生たちといっしょに地元の業界地図を制作し出版できればと考えています。全国の業界誌ではなかなかわからない地元経済の動向の情報をまとめるという取り組みです。
また、私自身は、今春から九州大学大学院の博士課程で、フードシステム全体の経済性を評価するという研究を行う予定です。フードシステムに関わる生産者や消費者が、他の選択肢もある中で、結果との整合性を照らし合わせて、なぜその選択肢を選んだのかというファクター分析を実施して、社会全体の経済合理性を評価しようというものです。最終的に施策やルールなどの制度設計をすることが目的です。こうした研究での経験やスキルもまた、学生たちに還元していきたいと思います。
コロナ禍で学生とのコンタクトが取りづらい中、フィールドワークやゲームを活用したユニークな方法で充実したゼミ活動を実施。授業がない日は研究室を開放して一人ひとりの学生をサポートしています。