中村学園大学・中村学園大学短期大学部

社会貢献や地域貢献を通して 他者と関わり造形や表現を 学んでほしい
教育学部 児童幼児教育学科倉原 弘子 講師
PROFILE熊本大学大学院修士課程修了、 修士(教育学)取得。2017年4月より現職。2018年、第73回 新匠工芸会展会友賞受賞ほか、各種工芸展にて受賞多数。新匠工芸会会友。本学では幼児の表現造形、 美術教育についての授業を担当。私立幼稚園連盟等において各種研修会の講師を務め、社会貢献活動も行っている。
木工芸の作品制作に取り組みながら幼児教育の造形分野や美術教育について調査研究を行う教育学部の倉原講師に、
積極的に地域貢献を行うゼミでの活動や今後の授業についてお話を伺いました。
先生の研究について教えてください。
学生のころからずっと、短冊箱や盛器といった木工芸の作品制作を続けています。拭漆で仕上げた伝統工芸品です。教育者として活動したり「表現」という分野の研究を行うためには、まず自分自身が作ることの楽しさ、表現することの楽しさを実感することが大切だというのが私の考えだからです。毎年、作品を仕上げ、新匠工芸展などの工芸展に出品しています。
もうひとつ行っているのは、幼児教育の造形分野に関する論文の執筆や美術教育に関する調査研究です。その中で一番力を入れているのが、幼児の造形表現についてです。子どもの興味関心に基づいた主体的な表現括動に着目しています。たとえば、雨の絵を描くときに「こんな風に描きましょう」とゴールを決めてしまうのではなく、外に出て子どもが雨を全身で受けてみたり、傘をさして雨粒を観察したりなど「感じること」を大切にしてほしい。子どもの自由な体験を感じるままに表現すること、その過程を大切にする保育に惹かれます。そうした子どもの自己肯定感を高める保育のあり方を、提案していけたらと思っています。
ゼミではどのような活動を行っていますか?
ゼミでは、実際に作品制作をしながら、その経験を通して学んだ表現を子どもたちの教育に活かしていくことをテーマに活動しています。自分の輿味があることに取り組んで主体的に学ぶ、という趣旨になっているため、制作方法等を自ら調べ、水彩画、布おもちゃ、子ども服など研究テーマはさまざまです。
また、造形を通じた国際交流や地域貢献の活動にも積極的に取り組んでいます。中村学園大学と教育・学術交流協定を締結しているフィンランドのトゥルク応用科学大学の先生や学生とアートワークショップをこれまでに二度実施しました。地域では城南区が開催している『のびのび夢ひろばじょうなん』で子どもたちに牛乳パックなど身近な素材で工作をするイベントに携わりました。そして、昨年から今年にかけては、城南区『一人一花運動』の一環として、中村学園大学そばにある別府駅駐輪場の「緑のカーテン」をデザインしてほしいという依頼をいただき取り組みました。今年卒業した学生たちが「一人ひとりが自分の花を咲かせよう」というコンセプトからデザインを考え、現在の4年生が引き継いで今年の4月に設置しました。
依頼を受けてデザインする上で大切なのは、自分たちの好きなようにするのではなく、依頼者の要望に応えるものにすること。その分、戸惑うこともあったと思いますが、他者との関わりの中で学ぶことができ、良い経験になったと思います。
フィンランドのトゥルク応用科学大学の学生とのアートワークショップ。2回目となったこのときは、ゼミ生もいっしょに墨絵や折り紙を楽しみました。
子ともたちの自己肯定感を高め、安心して表現できる環境をつくっていくことができる。
そんな教育者を育てていけたら、 と考えています。
今後の活動について教えてください。
ゼミでは今後も社会貢献や地域貢献の機会があれば積極的に参加していく予定です。地域の子どもたちといっしょに造形活動をする機会にまた恵まれたらと思います。学生達に体験を通して実践的に学んでもらいたいです。
また、授業では、新型コロナウイルス感染症が収束したら、以前のように美術館を訪れる鑑賞教育も再開したいですね。美術館に行かない、行ったことがないという学生も実際に行ってみると友人と意見を共有し、色々な視点で鑑賞することの面白さに気付くようです。そうした点において、鑑賞は他者理解にもつながります。他者を理解することは教育者にとって大切なこと。授業で機会を設けることで鑑賞に対する意識が変わればうれしいです。
緑のカーテンに城南区のシンボルキャラクター『ニッコりん』、そして中村学園公式キャラクター『つぼみさん』が配置され、明るく楽しい雰囲気の壁面が完成しました。