中村学園大学・中村学園大学短期大学部

栄養と運動の両方を理解し 多職種協働できる人材の育成を
栄養科学部 栄養科学科熊原 秀晃 教授
PROFILE北海道大学大学院教育学研究科博士課程修了。 2010年中村学園大学栄養科学部着任。2021年4月より現職。授業では、 講義のほか運動実技を伴う実習· 演習を担当。また、 健康増進センター・栄養クリニック にも所属。NPO法人日本スポーツ栄養学会理事、 (一社)日本体力医学会評議員など、 関連学術団体の役員・評議員を務めている。
学生たちに『スポーツ栄養』を教えながら研究室での実験だけでなく、学外フィールドでも精力的な研究活動を行う栄養科学部の熊原教授。
今回は、スポーツ栄養の学びの本質や先生の研究活動についてお話を伺いました。
先生が教えている『スポーツ栄養』とはどのような学問ですか?
私は「スポーツ栄養」という用語は間違って認識されていることが多く、学間としては成長中だと思っているんです。スポーツ栄養の基礎学問は、私の専門である運動生理学や体力科学。身体を動かしたときに、身体の中でどのような変化や適応が起きるかを調べる研究分野です。運動しているときは座っているときよりも必要性が増す栄養があるはずですよね。どういった栄養がなぜ、どれだけ必要となるかを基礎学問から促え、必要量の増加にどのように対応するのかを、その他多くの領域からの知識や技能を統合して考えるのがスポーツ栄養です。
スポーツ栄養というとよく誤解されるのですが、必ずしもスポーツ=競技ということではありません。アスリートが行う競技スポーツも、一般の方の健康づくりのウォーキングも、身体を動かすという点でどちらも同じスポーツです。それぞれに必要となる栄養があるので、スポーツ栄養は、競技者のためだけのものではありませんよね。身体を動かす全ての人が対象となります。

私が受け持っている実習授業では、運動中に測った心拍数などの情報を教科書に書いてある理論と比較・検討しながら、自分に最も適した運動量を探ります。
実際の体験からの学びを他の人に伝えられるようになれば、栄養だけでなく運動についてもアドバイスのできる管理栄養士になれるでしょう。
身体を動かすことは、健康な人にも病気の人にも大切なことです。栄養の指導をしていると運動についても問われることが多いので、授業で学んだことを活かしてもらえたらと思います。
先生が行っている研究活動について教えてください。
プロジェクトの一つは、摂食行動をコントロールする運動の条件に関する実験です。身体をどれくらいどんな風に動かしたらどういった食行動につながるのか、に着目した研究です。例えば、食が細くなる高齢者は、栄養状態が悪くなっていることが多く、それが虚弱につながってしまいます。そのため、運動することで食欲が増すような運動プログラムを提供し、良い食行動につなげられるよう考えるのです。このように、さまざまな実験を通して、しっかり食べてほしい方への運動や、逆に運動後に摂食を抑え、体重減量に導く運動の条件などを探っています。各々の目的に応じて運動で食行動をコントロールできたらおもしろいし、健康増進には一石二烏と思いませんか。
また、ゼミの学生が「競泳」をテーマに卒業論文に取り組んだことがきっかけでご縁ができ、スイミングクラブとの調査を2014年から続けています。選手たちの食事内容を聞き、どのような食事が身体づくりにつながっているかを調査することで、競技でより成果が出せる食事の摂り方について調べるというもの。ほかにもラグビーや陸上、カヌー、サッカーなど、さまざまな競技の選手たちに携わりました。いずれも調査させていただくだけでなく、データでフィードバックを行うことは社会貢献にもつながるので、今後も充実させていきたいと思います。
管理栄養士としてスポーツ栄養を仕事にするのは狭き門だと思われがちですが、競技スポーツだけでなく健康づくりの現場など、スポーツ栄養の知識が必要とされるフィールドはたくさんあると思います。管理栄養士を目指す学生たちには輻広い選択肢があるはずです。
管理栄養士としてスポーツ栄養に携わるのは決して狭き門ではない。
スポーツ栄養が必要とされるフィールドは競技だけではありません。
今後の目標について教えてください。
私の学科の学生たちは栄養を学んでいますが、身体を動かすことも健康をつくるのに欠かせないということ。そして、それは競技者にとっても一般の方にとっても同じだということを理解し、各々の人が必要とする健康状態を維持あるいは高めていくためにどうするか、に寄与できる人材を本学から出していけたらうれしいなと思います。日本といわず世界でも活躍する学生が出てくるといいですね。栄養と運動の両方を理解し、多職種協働できる人材は貴重だと思います。どちらも熟知しているというのは、管理栄養士としても強みの一つとなるのではないでしょうか。