中村学園大学・中村学園大学短期大学部

人口減少などの地域課題を 関係人口の構築によって 解決していく取り組みを
流通科学部流通科学科前嶋 了二 准教授
PROFILE九州大学法学部(政治学専攻)、同大学院経済学府産業マネジメント修士(MBA)卒業。1985年㈱JTB入社。国内支店の他イタリア、スペイン、スイス、フランスの在外支店勤務。福岡市、北九州市、熊本市のコンベンションビューローでの国際会議誘致、長崎県庁でのクルーズ船・訪日観光客誘致戦略を担当。2019年4月より現職。「世界持続可能な観光協議会(GSTC)」認定NPO「Travelife」公認審査員。
長年、観光業界の第一線で働いた経験を活かして地域の課題解決に向けた取り組みを行ってきた
流通科学部流通科学科の前嶋准教授に、ご自身の研究や講義・ゼミでの活動についてお話を伺いました。
先生の経歴・研究内容を教えてください
中村学園大学に来る前は、JTBに34年間在籍していました。そのうち半分くらいの年月は自治体や観光団体に出向していたほか、イタリア、スペイン、スイス、フランスの在外支店でも勤務。さまざまな経験をさせていただきました。在職中から国や自治体の調査事業、大学での講義を引き受けて教えに行くこともあり、将来的には教育・研究に取り組みたいという目標があったので、今はその思いが叶った状態です。
私の主な研究は、人口減少地域の課題を「関係人口」の構築によって解決していくこと。「関係人口」とは、その地域と関わりやつながりを持ち、地域外に住みながら関与・支援し続ける人たちのことです。例えば、私が観光戦略担当をしていた大分県佐伯市には、人口15人、ネコ100匹という「深島」があり、そこは島だけでは人もネコもコミュニティを維持できない状態でした。そこで、深島を支えるため、観光に訪れる人に購入していただける『深島ねこ図鑑2019』を企画し販売しました。深島とネコ一匹一匹を丁寧に紹介したこの図鑑は、メディア、SNSでも多く取り上げられ、島を訪れる観光客も増えました。また、図鑑の注文は、大分に次いで関東・関西の都市部から多く、遠くは北海道からの購入もあって、50万円もの寄付をされる方も現れました。
他にも獣医師や清掃のボランティアなど、この図鑑をきっかけに深島は島外からさまざまな支援を得て、住民とネコのコミュニティを維持しています。
講義やゼミではどのような活動を行っていますか?
私の講義やゼミでは、地域に目を向け、生産地を中心とした人口減少地域の「関係人口」を増やす取り組みを学んでいただけたらと考え、実践的な活動を行っています。
先日、その学びの一環として、学生たちと、うきは・柳川でフードツーリズムのフィールドワークを実施しました。うきはでは果樹園で生産者の話を聞いたり、棚田で地元食材をつかった料理を作って下さった地域の方々と交流をしたりしました。その土地でしかできない体験を通して、生産地と都市を結ぶ“食”と、それを作っている“人”がいかに重要であるかを学生たちは実感したようです。柳川では、「観光まちづくり」をテーマに食”を介して地域住民と交流できる体験型観光を企画、実施しました。
日本社会が抱える人口減少と超高齢化の進行は大変深刻です。現在は人口が増え続けているこの福岡市でも、2035年ごろには減少局面に入るといわれています。これからを生きる学生たちは、必ずその問題と対峙するときがきます。
グローバル、ローカル両方の視野と知識をもちつつ、地域の課題をしっかり考え、取り組むことができる人材に育ってほしいというのが私の思いです。
自分と家族が過ごす場所が人口減少や経済の停滞に直面しても、本当に幸せといえるものは何なのか。自分の座標軸を持って生きていけるようになってくれたらと思います。
グローバル、ローカル両方の視点と知識を大切に、
自分の座標軸を持って生きる人になってほしい
今後の目標について教えてください
中村学園大学の特色のひとつである“食”を取り入れた『フードツーリズム』という科目を磨き上げていきたいです。さらに、私の研究分野のひとつでもある、MICE(企業の会議や報奨旅行、非営利団体の会議、見本市やスポーツ・文化イベントなどのビジネスイベント)に関する講義を行う大学が少ないので、ビジネスツーリズムの世界についても学習してもらえるようにしたいと思っており、長期のインターンシップなどを実施しています。
また、ゼミ活動では、学生一人ひとりが自分の興味がある分野を研究する過程で、多くの人と接して学び、社会で必要なコミュニケーション能力を磨いてほしいと思います。