中村学園大学・中村学園大学短期大学部

都道府県の地域活性化に向けた研究と データサイエンス教育に繋がる 研究を、さらにこれからも
流通科学部 流通科学科橋本 敦夫 准教授
PROFILE北九州市立北九州大学商学部経営学科卒業後、高校教諭(商業・情報)として29年間勤務。勤務しながら夜間通学で、2006年中村学園大学大学院 流通科学研究科修了、修士(流通科学)。2015年福岡大学大学院 商学研究科博士課程(後期)修了、博士(商学)。長崎総合科学大学総合情報学部総合情報学科 准教授を務めた後、2019年4月より現職。研究分野は経営学。本学の授業では、「経営科学」「意思決定論」「経営情報システム論」等担当。
キーワードは「オペレーションズ・リサーチ」、そして「データサイエンス教育」。
二つの領域を横断して研究を進める橋本 敦夫准教授に、取り組んでいる内容や今後のプランなどを伺いました。
経営学の中でどのような研究をされているのですか。
 オペレーションズ・リサーチ(以下OR)という分野の研究を中心に行なっています。ORは経営科学とほぼ同じ内容で、さまざまな計画において数理的な計算によって有効な提案をする科学的な問題解決法です。
 例えば会社の売上げを伸ばすという目的があるとすると、経営者の経験に頼るのではなく、これまでのいろんな項目の予算や配置した人員など必要なデータを集め、エクセルやプログラムを活用して分析を行い効率的で適切な方法を示します。 
 私が軸に据えているのは、包絡分析法(数理的に効率性を分析する方法の一つ)を用いた都道府県や市町村の活性化につながる研究です。一例を挙げると、関西地域の道州制導入に関して、府県が合併することにより増加する産業生産額を明らかにし、合併府県の組合せパターンの中で相対的に有効性を評価しました。その際は制約式などを計算するためのプログラム制作が難航し、3ヶ月間も試行錯誤してついにクリア。こういうときに得られる大きな達成感がやりがいになっています。
 その他には、地域の社会福祉を持続的に支えることを目指した都道府県の生産性の効率性評価や銀行の経営プロセスのモデル化による利益効率・非効率の推計にも取り組んできました。
学生への指導に関する研究について教えてください。
 高校教諭時代に情報教育に携わっていた経験がベースにあり、データサイエンス教育も私の大事なテーマとなっています。現在、小・中・高等学校で統計を学びますが、世に出ているさまざまな統計データが正しいかどうかを見極める客観的な力がもっと必要だと感じています。
 統計データに対する正しい判断力は消費者としても職業人としても必ず役に立つので誰もが身につけてほしい。そんな思いで高校の商業教育と大学の経営学教育におけるデータサイエンスのより効果的な指導方法を研究しています。それはORや問題発見学習にも結び付くものです。 
 大切にしているのは、まず、統計は面白いと興味を抱いてもらうこと。例えば、紙オムツとビールが一緒に購入される確率が高いというデータは、意外性があって面白いと感じませんか。このような顧客の購入経路やパターンを分析する「アソシエーション分析」の授業は、高校生も大学生も興味を持って統計を学べると手応えを感じています。今後も研究を深めその成果を高校の教員の方々などに発信したいと思っています。
統計データに対する正しい判断力は消費者としても職業人としても必ず役に立つので誰もが身につけてほしい。
今後の活動についてお聞かせください。
 学内では、新たに、企業に蓄積された大量のデータを集めて分析し経営に役立てるためのツール「BIツール」の教育も推進したいと考えています。ゼミ内に模擬会社を作り、模擬の商品取引を試みたいと思っています。その際、ベースとなるのは、流通科学部の専門科目の学びです。仕入れから販売、在庫管理、財務管理が基本になります。
 そこに、BIツールの仕組みを活用し、データポータルで模擬会社の経営状況を分析し、表やグラフで可視化します。このような経営指針に関わる情報を管理し、会社の利益といった評価項目によって、この模擬経営活動を評価することを目指します。
 ゼミでは、こうした体験を積んだうえで、福岡市東区にある菓子総合卸売業の企業と連携してより実践的に学ぶ計画を進めていきたいと思っています。