中村学園大学・中村学園大学短期大学部

現場主義に徹しながら 食品流通の研究を進め 農業の持続や地域振興に貢献したい。
流通科学部 流通科学科中川 隆 准教授
PROFILE九州大学大学院生物資源環境科学府農業資源経済学専攻博士後期課程中途退学、博士(農学)。別府大学国際経営学部にて助教、准教授を務めた後、2016年4月より現職。本学の授業では、「経済学入門」「ミクロ経済学」「アグリビジネス」「食品流通論」等担当。食農資源経済学会理事、地域デザイン学会九州・沖縄地域部会部会長、日本流通学会幹事など、学会の役員も務めている。
農業経済学の中でも畜産分野をメインに
時代のニーズに応える研究に取り組む中川 隆准教授。
注力している研究テーマやゼミ活動、抱負などについていろいろ伺いました。
どんな研究に取り組まれているのですか。
 専門は食料や農業の経済学で、中でもメインは畜産分野です。大学院で、家畜の不可食部分や骨を肉骨粉や油脂に加工するレンダリング産業についての研究を始めたのが、この分野に関わる出発点となりました。リサイクルに関する代表的先進国のドイツに留学もして、食のリサイクルと安全をどう統合させるかをテーマに追究しました。
 日本で食にまつわる安全が浸透してきた近年は、担い手不足など厳しい畜産の情勢に視点を置いています。着目しているのは非農業分野から畜産業に参入する農業経営体と地域振興の関係です。最近は、企業が飼料生産、家畜飼養から食肉加工、販売、流通まで、畜産業を統合して経営する「インテグレーション」について研究を深めています。
 現場主義に徹し、JA や農家の方に聞き取り調査もよく行いますが、農業者から見ると農業外からの参入は好意的には受け入れ難い面があるのも確か。しかしインテグレーションは新たな雇用創出や農業生産の向上など地域への貢献が大きく、新規参入者を仲間として受け入れ共に地域振興を目指していくのが得策だと考えています。また参入した多くの企業は、人や環境や地域などに配虜した「エシカル消費」に対応した取り組みをしているという側面にも注目すべきというのが私の見解です。
ゼミの特徴について教えてください。
 ゼミの研究テーマは食品流通や食料経済です。概して都市部出身の学生が多いこともあり、まず現場を体験的に理解するため、農産物直売所や農産物加工所などの視察を行なっています。最近では大分県日田市の「木の花ガルテン」や「いいちこ日田蒸留所」を訪れました。
 机上での専門的な勉強も大事ですが、実際に商品を見て、店の雰囲気を感じ、担当者から地場農産物の販売実態や地域ブランド戦略を聞くといった臨場感ある学びは、学生にとって大きな糧になることでしょう。その中で地域の持つ奥深い魅力に気づいてもらいたいです。
 コロナ禍になる前は、毎年のように糸島市の農村を訪れて、田植えや野菜の収穫体験も実施していました。ようやく状況が落ち着いてきたので、ぜひ、体験してもらいたいですね。高齢の農家の方が多く、学生が手伝いに行くと本当に喜ばれます。農家の方々と触れ合い、作付けや収穫の達成感を味わい、地域の農業や食を肌感覚で理解してほしいと思っています。
実際に商品を見て、店の雰囲気を感じ、担当者から地場農産物の販売実態や地域ブランド戦略を聞くといった臨場感ある学びは、学生にとって大きな糧になることでしょう。
今後の抱負などについてお聞かせください。
 コロナ禍で途絶えていた海外調査を再開したいですね。以前、日本の主な食料輸入相手国であるオーストラリアやアメリカなどに赴きましたが、両国への再訪も含め諸外国で見聞を広めたいと思っています。
 特に私の専門である食肉流通については、再びオーストラリアに行き、牛の生産や解体の現場でどういう安全管理をして日本へ輸出しているかなど、最新の動向を探りたいです。
 国内ではこれまで行政との連携で近江牛や能登牛など多くのブランド牛の調査も手掛けてきました。コロナをあまり気にせず動けるようになったので、推進していきたいです。
 今、佐渡島、壱岐、石垣島など子牛生産が盛んな離島の畜産に注目しています。各地域での取り組みや工夫などをリサーチして、牛肉の供給基地としての離島の重要性を追究していきたいと考えています。