これまでもこれからも、子どもを
肯定的に見る保育者のまなざしを
真ん中に据えた研究や教育を。
教育学部 児童幼児教育学科笠原 正洋 教授
PROFILE九州大学大学院教育学研究科で修士課程および博士課程を修了。九州大学教育学部にて助手として勤務したのち、中村学園短期大学幼児教育科講師、中村学園大学家政学部児童学科(現教育学部児童幼児教育学科)講師、専任講師、准教授を経て、2009年4月より現職。研究分野は発達臨床心理学・保育学。本学では「子育て支援」「保育内容人間関係」等担当。福岡県こども審議会委員、福岡市こども・子育て審議会教育・保育施設等認可・確認専門部会委員等を務める。
児童虐待防止や子育て支援を重要視し、真に子どもの育ちを支える保育者の育成に尽力する笠原 正洋 教授。
ご自身の研究活動や授業などについて、お話を伺いました。
ご自身の研究活動や授業などについて、お話を伺いました。
先生が取り組んでいる研究などについて教えてください。
保育において非常に重要なのが、関係発達論的な視点です。子どもは母親などの養育者を主とした大人に心を読み取ってもらい、例えば「お腹が空いたね」「オムツを変えようか」といった言葉がけをされ、その時の自身の心的状況を理解していきます。子どもの育ちは人との関係の発達によって進んでいくのです。保育者は保育実践の場で子どもを常に肯定的に見てその心を汲み取り、子どもが自発的に遊んだり考えたりできる環境を整えなければなりません。そのことが私の研究や教育の根幹にあります。
子どもの育ちを妨害する要因の1つである児童虐待の防止は、私の主な研究テーマの一つです。児童虐待を保育所で発見した場合はどう対応するか、子どもの育ちをどう立て直すか。保育所をベースとした虐待の発見、通告、児童相談所や福祉事務所との連携などについて探究し、約9年かけて保育所における「児童虐待防止の教育プログラム」を作成しました。
その研究に取り組んでいる頃は今と違い、保育所は虐待問題にあまり関与できないのではないかと言われていたのですが、私の研究で児童虐待防止において保育士がとても期待されているといち早くわかったことも成果でした。保育所と児童相談所や福祉事務所がより密に連携することで、虐待を受けている子どもや家族が救われていきます。保育所側は虐待環境にある子どもの情報を関係先に積極的に発信していくことが重要になります。
子どもの育ちを妨害する要因の1つである児童虐待の防止は、私の主な研究テーマの一つです。児童虐待を保育所で発見した場合はどう対応するか、子どもの育ちをどう立て直すか。保育所をベースとした虐待の発見、通告、児童相談所や福祉事務所との連携などについて探究し、約9年かけて保育所における「児童虐待防止の教育プログラム」を作成しました。
その研究に取り組んでいる頃は今と違い、保育所は虐待問題にあまり関与できないのではないかと言われていたのですが、私の研究で児童虐待防止において保育士がとても期待されているといち早くわかったことも成果でした。保育所と児童相談所や福祉事務所がより密に連携することで、虐待を受けている子どもや家族が救われていきます。保育所側は虐待環境にある子どもの情報を関係先に積極的に発信していくことが重要になります。
先生の研究が反映された授業について教えてください。
前出の教育プログラムを教材に取り入れた授業が「子育て支援」です。大きな特徴は、育児経験があり子育て支援事業に携わっている方や元保育士さんなどが「模擬養育者」を演じ、実際に保育実践の場で見られる具体的な事例を題材に、保育士の立場になった学生が模擬養育者と対話しながら学習を進めていく対話実習です。
本学栄養科学部の管理栄養士養成教育に導入されている模擬患者実習を参考に保育者養成教育に導入しました。学生は、心に余裕がなくつい子どもに手をあげてしまいそうになる、子どもの発達が遅れているようで気に病んでいるなど、模擬養育者の相談に応じたり、模擬養育者に適切な質問を投げかけ、その答えを丁寧に聴き取るといったトレーニングを積み重ねていきます。保育者養成教育においてこのような対話実習形式の授業を導入したのはめずらしい取り組みだと思います。
保育者の卵である学生にとって、リアリティのある学びができることは大きな糧になります。保育者はみんな本当に子ども思いで、いい意味で養育者に何かとアドバイスしがちです。しかし、特に新任保育士がそうすると「まだ子育て経験もなく、何もわかっていないのに」など、養育者に反発され養育者との信頼関係を損ねてしまうことも少なくありません。そのような養育者の気持ちも学生は模擬養育者との対話実習を通して理解し、養育者に自然に寄り添える保育者に近づいていきます。
本学栄養科学部の管理栄養士養成教育に導入されている模擬患者実習を参考に保育者養成教育に導入しました。学生は、心に余裕がなくつい子どもに手をあげてしまいそうになる、子どもの発達が遅れているようで気に病んでいるなど、模擬養育者の相談に応じたり、模擬養育者に適切な質問を投げかけ、その答えを丁寧に聴き取るといったトレーニングを積み重ねていきます。保育者養成教育においてこのような対話実習形式の授業を導入したのはめずらしい取り組みだと思います。
保育者の卵である学生にとって、リアリティのある学びができることは大きな糧になります。保育者はみんな本当に子ども思いで、いい意味で養育者に何かとアドバイスしがちです。しかし、特に新任保育士がそうすると「まだ子育て経験もなく、何もわかっていないのに」など、養育者に反発され養育者との信頼関係を損ねてしまうことも少なくありません。そのような養育者の気持ちも学生は模擬養育者との対話実習を通して理解し、養育者に自然に寄り添える保育者に近づいていきます。
子どもの育ちは人との関係の発達によって進んでいくもの。
保育者は保育実践の場で子どもを常に肯定的に見てその心を汲み取り、子どもが自発的に遊んだり考えたりできる環境を整えなければならない。
保育者は保育実践の場で子どもを常に肯定的に見てその心を汲み取り、子どもが自発的に遊んだり考えたりできる環境を整えなければならない。
今後の抱負などをお聞かせください。
ずっと取り組み続けてきた、子どもの立場に立った保育者のまなざしを大切にした教育を深化させていきたいですね。学生がこれらのプログラムを通じ成長できているのかを確認するため、学生のレポートや学生からの評価などを精査しているところです。それをまとめあげて、これからの教育に活かしたいと思っています。
また、保育者のまなざしをキーワードとして、子ども主体の保育を追究していきたいと考えています。子ども主体の保育に影響を与える取り組みは何か、何をもって子ども主体の保育と言えるのかなど、子ども主体の保育を構成する一つ一つの事象をリサーチし、子ども主体の保育が展開していくプロセスを可視化できればと思っています。
また、保育者のまなざしをキーワードとして、子ども主体の保育を追究していきたいと考えています。子ども主体の保育に影響を与える取り組みは何か、何をもって子ども主体の保育と言えるのかなど、子ども主体の保育を構成する一つ一つの事象をリサーチし、子ども主体の保育が展開していくプロセスを可視化できればと思っています。