中村学園大学・中村学園大学短期大学部

保育者という仕事を長く続けてほしい その思いを込めた研究を重ねながら、 高齢者にも着目した新たな取組みも推進。
短期大学部 幼児保育学科川俣 美砂子 教授
PROFILE中村学園大学家政学部(現教育学部)卒業。幼稚園教諭として12年間勤務の後、専門学校、短期大学、国立四年制大学等で就業しながら、福岡教育大学修士課程修了、九州大学博士課程単位修得満期退学、高知大学博士課程修了。2023年4月より現職。保育者がやりがいを持って長期就業できることを願って研究を続けている。本学では、「保育原理」「教育課程総論」「保育所実習指導A」等を担当。
本学での4年間の学びと保育者としての豊かな経験をバックグラウンドに、研究や教育を深めてきた川俣 美砂子教授。
研究内容、ゼミや授業の取り組みなどについてお聞きしました。
どのような研究に取り組まれているのですか。
 私は本学の卒業生です。4年次に付属あさひ幼稚園に実習に行き、幼稚園の先生は本当に楽しいと心底感じたことが、今に至る原点といえます。卒業後に幼稚園教諭として経験を積む中で、なぜこの仕事は早期離職者が多いのだろう、長期就業するためにはどうしたらいいのだろうと感じることがありました。それが私の研究テーマの柱になっています。修士論文では、幼稚園教諭を対象にした早期離職の調査・研究を行い、労働条件、人間関係、やりがいという問題が背景にあって、そこに女性のライフサイクルである結婚・出産、中堅のキャリア変化などの条件が重なることにより早期離職が起きやすいと結論づけました。
 さらに博士論文では、バーンアウト(燃え尽き症候群=以下BO)に陥りやすいとされる対人援助職の一つである保育者と生活リズムの関係に着眼し追究しました。様々な園の職員の方への質問調査を実施して結果を分析し、睡眠時間が短いとBOスコアが高くなり、生活の朝型化がBO低減に加え脱人格化(人との接触が嫌になること)の改善に有効であるなどの結果を得ました。また職場に相談相手がいることもBO低減の鍵で、保育者にとって適切な生活リズムの維持や互いに相談し合える人間関係づくりの重要さが分かりました。
 睡眠について見識を深めた関連から、現在、短期大学部3学科の先生方と共同で「シニアのための睡眠・嗜好調査」を進めています。地域の高齢者の方々にアンケートをお願いして交流する中で、その方たちが地域に根付く歴史や文化に通じていることに感動を覚えるなど、いろいろな気づきもあり有意義に感じています。
ゼミ活動や担当授業などについて教えてください。
 ゼミでは地域子育て支援広場「あそびの会」を定期的に学内で開催しています。これは15組程度の親子に集まっていただき、身近にある素材を使用しておもちゃを作るなどして、いろいろな遊びを楽しんでもらうという催しです。例えば、ドライフラワー、キラキラのホイル折り紙、包装紙、ペットボトルの蓋等を使い親子で虹色の魚のお面作りを行い、そのお面を子どもたちがつけ魚に扮して遊ぶなど、毎回、学生がさまざまなアイデアを出しながら練り上げた企画をかたちにしています。準備に加え当会を終えたら必ず振り返りの時間を設け、学生が反省点など闊達に意見を出し合い次に活かすようにしています。
 幼児保育学科では1年次の終わりに最初の保育所実習があり、私は実習指導の授業を担当しています。より充実した学びのある実習にするため、事前に現場を体験することが大事だと考えています。昨年度は近隣の4つの保育園にご協力いただいて、保育体験をさせていただきました。今年度は、本学付属のおひさま保育園や大濠保育園での見学や保育体験の実施など、さらに充実した内容になっています。
保育者がやりがいをもって長期就業するというテーマをさらに追究していきたい
今後の抱負などについてお聞かせください。
 保育者がやりがいをもって長期就業するというテーマをさらに追究していきたいです。また「シニアのための睡眠・嗜好調査」は、現在アンケート調査が終わり集計中で、今後は分析を行い論文にまとめて発表できればと考えています。同じ調査が進んでいるチェコとインドの研究結果も大変興味深いです。
また学生にも、この調査でお世話になった高齢者の方々とふれ合い、地域に関する知識を広げてほしいという思いがあり、近隣の高齢者サロンと学生との交流も実施される運びとなりました。保育者は子どもやその保護者だけに限らず、広い視野で地域と関わることが大切なので、高齢者の方々とつながることは意義が大きいはずです。