中村学園大学・中村学園大学短期大学部

特定分野の英語教育で 食の現場のグローバル化に 対応できる力を養う。
栄養科学部 フード・マネジメント学科津田 晶子 准教授
PROFILE比較社会文化学博士、英語科教授法修士(MEd in TESOL)、通訳案内士。九州大学文学部を卒業後、メーカー総合職、外資系航空会社地上総合職、産業翻訳・字幕翻訳業を経て、大学英語教員に。英国レディング大学客員研究員(2013年度)。2007年中村学園大学短期大学部食物栄養学科に着任、2019年4月より栄養科学部フード・マネジメント学科准教授。
専門知識を正確な英語で伝える。社会のニーズに合わせた英語教育に取り組む津田晶子准教授にお話を伺いました。
先生の研究分野について教えてください
 私が専門としているのは、ESP=English for Specific Purposesといって『特定分野の英語教育』です。高校までの総合英語とは違い、ESPでは実際に社会に出てから必要となる英語を勉強します。本学の場合で言えば、栄養、教育、ビジネスと分野もさまざま。学生が学ぶものに合わせた英語教育が必要となってきます。ところが、私の研究の一つとして、科研費を得て、全国の栄養系の大学や短大に現在の英語教育や英語のニーズはどんなものがあるか?という調査を行ったところ、専門教員が必要と思っている英語教育と、英語教員が教えている英語が大きく乖離していることがわかったんです。私が所属している栄養科学部は、基本的に理系です。医学や薬学、農学といった専門的な学びが多く、フード・マネジメント学科では、さらにビジネスに関する文系の学びも増えます。そうしたことからも、社会にでてからは、より専門的な英語の知識、表現力が求められるため、特定分野の英語力が必要となります。
栄養や食文化の英語教育を専門とされたきっかけは?
 大学卒業後は外資系の航空会社に勤務していました。そこでは、マニュアルからお客様とのやりとり、日常会話まで全てが英語なのでそこで英語力を培い、結婚後に子育てをしながら大学院に進学し、博士号を取得したんです。本学へ着任後は、食物栄養学科の所属となったため、日本や世界の食文化など、さまざまな専門分野について研究しました。本学は学部ごとに外国語教員がいるのも大きな特長です。学生たちが学ぶそれぞれの専門分野に寄り添った英語教育でなければ、学んだことを生かすことができないと思い、私自身も知識を蓄えるため、専門教員との共同研究には力を入れました。
日本の食文化を伝えるものから、さまざまな国の母の味を紹介したレシピ本まで、翻訳本も多数。
過密化したカリキュラムの中で、必要な英語をピンポイントで教える。専門教員と英語を繋ぐコーディネーター的役割りが好きなんです。
現在の社会で必要とされる英語力とは?
 さまざまなシーンでグローバル化という言葉を耳にしますが、実際に、多くの企業で外国人と接する機会が多くなってきています。栄養士や食品産業の現場もそうです。
 例えば、海外企業や外国人留学生の受け入れが多い大学近隣の保育園などは、さまざまな国の子ども達が通園しています。そこには、宗教上の理由やベジタリアン、アレルギーなどいろいろな理由で、食材が制限される人達もいます。それに、日本へ来たからといって日本語が堪能な方ばかりではありません。栄養士としてより専門的な正しい情報を伝えるといった、英語でのコミュニケーション力が必要となってきます。それは他分野でも同じで、今の社会で最も重要とされている英語力だと思います。
宮崎の郷土料理『チキン南蛮』の作り方を動画で紹介。字幕や音声によるガイドも全て英語。(中村学園大学短期大学部プロジェクト研究)
先生の取り組み、さらに今後の目標について教えてください。
 近年では、福岡の街でも多くの外国人を見かけるようになりました。観光やビジネスなど、訪れる目的はさまざまですが、訪れた人に正しい日本の食文化、そして、福岡で生活する外国人にとって役立つ食の情報を発信する、という取り組みを行っています。「やずや食と健康研究所」の助成を得て、福岡在住の外国人が食生活において何に困っているのか、何を知りたいのかを調べたところ、食材や調味料一つにしても何を買えば良いのかわからないという声が多かったんです。せっかく教えるのであれば、私たちのふるさとの味を伝えたいと思い、食のプロである本学の先生方に、レシピと調理をご協力いただき、私は英文の監修とコーディネートを担当。地元新聞社と連携し、九州の郷土料理の翻訳レシピ本を発行しました。こうした経験からも、今後はもっと地域に寄り添った研究を進めていきたいと考えています。それは、本学の学生や他大学の学生、留学生が一緒に学べる食に関する英語教育プログラムを作ること。食という分野から外国人との交流を深め、相互の文化を理解していけたら素晴らしいなと思っています。
食物栄養学科在籍時には、ゼミの学生による「九州各県をレンタカーで周りながらおいしい麺を食べんね!」の企画が、第2回JATA九州支部「学生による企画提案コンテスト」で審査員特別賞を受賞した。