中村学園大学・中村学園大学短期大学部

「西洋料理特別料理示範 ~帝国ホテル第14代東京料理長 杉本 雄氏~」

2022年11月30日

学園祖中村ハル先生の「本物の味を知る」という教えを継承し、本学では、栄養科学部および短期大学部食物栄養学科の学生を対象に、「調理すること」への関心を高め、調理技術の向上を目指すための、料理のプロによる特別講演及び料理示範を行っています。
この講座は、プロの調理の技や心構えを見ることにより、食領域に携わる者としての豊かな感性を育むことを目的としています。2022年11月15日(火)、帝国ホテル第14代東京料理長の杉本雄氏を講師にお招きしました。

杉本料理長は2019年、38歳の若さで帝国ホテル第14代東京料理長に就任されました。
「一つの食材を最大限に生かし、使い切るのは、本来のフランス料理の精神である」と、食材に真摯な姿勢で向き合っておられます。「最高級の料理」と「サステナブル」は両立できるという信念のもと、日本の環境に寄与しながら本物の味を継承されています。本学でも、20年以上前から本学の薬膳科学研究所において、未利用食品を使用し、健康モデル食「日本型薬膳」を開発し、取り組んできました。双方の食に対する「本物の味の継承」と「サステナブルな取り組み」がマッチングし、今回の特別講義が実現しました。

久保千春学長からの挨拶に続き、杉本料理長の調理が始まりました。

杉本料理長が調理されたのは、以下の3品です。いずれのレシピもサステナブルな視点で選ばれた食材が用いられました。

・ブイヤベース

 

・鹿のロースト ショワジールの付け合わせ 赤いワインのソースで

 

・グランマニエのスフレ

「ブイヤベース」の魚貝類は、長崎・壱岐で杉本料理長が自ら選んだ未利用魚。市場では値がつかない規格外の魚が、杉本料理長の手によって最高級の一品に仕上がっていきます。杉本料理長は、「漁師の方が命がけで獲った魚を、私たちはしっかりと使い切る責任がある」と話します。

「鹿肉のロースト」に使用されるのは北海道のエゾ鹿肉。2022年11月1日より、農林水産省は、鹿や猪など野生鳥獣による農作物被害の対策として、環境保全を目的としたジビエの認知向上、普及、需要拡大を推進しており、今まさに注目されている食材です。杉本料理長が調理する鹿肉は、本学薬膳科学研究所の德井敎孝所長と栄養科学部 三成由美特任教授が北海道の白老町にて、狩猟から解体まで立ち合い、安心・安全を確認したものです。
ロース肉はステーキに、スジ肉はソースに使います。鍋肌に残ったスジ肉の焦げから、水をつけた刷毛を使って肉のうまみを丁寧に集め、ブイヨンと溶け込ませることを4~5回繰り返し、うまみが凝縮したソースに仕上げます。
「手間を惜しまず、食材をすべて使って、メインの一皿を構成する」というフランス料理の精神をご披露いただきました。

デザートは、グランマニエのスフレです。帝国ホテルの格式が高い伝統の味もあるかと思われますが、香り、色、テクスチャーともに老若男女問わず好まれるような、令和の新しい風が吹き込まれたスフレのレシピです。

講義の最後に、学生が「食材にも、人にも丁寧に向き合う杉本料理長に感銘を受けました。私も、人への敬意を忘れない管理栄養士になりたいと思います」と感想を発表しました。
杉本料理長からは、「白衣を着て、口に入るものをつくる私たちは、人の命を預かっていると言えます。人の命を守る、健康になる、サステナブルな社会をつくる、という社会的な課題に『食』を組み込んで、皆さんもぜひ取り組んでほしい」と激励のお言葉をいただきました。