国内フードビジネス研修Ⅰ:山口勇製茶工場様にて八女伝統玉露のお話をうかがいました
フード・マネジメント学科では、8月26日より集中講義「国内フードビジネス研修Ⅰ」が開講しました。これは、醤油や味噌、お酢といった日本古来の調味料から地域特産物を活かした伝統料理を含む「和食」を中心とした日本の食文化について、生産、加工、流通、販売の各分野からゲストスピーカーを招くとともに実際の製造現場を訪問しながら学んでいく授業です。フード・マネジメント学科1年の希望者40名が受講しました。
8月28日、福岡県八女市にある山口勇製茶工場様を訪問しました。以下、受講学生のレポートです。
<学生レポート>
八女伝統本玉露生産者である山口さんのお話を聞いて、八女伝統玉露の品質の高さと生産する大変さを学ぶことができました。
まずお話の中で印象に残ったのは、八女伝統本玉露として認められるための基準の高さです。
八女伝統本玉露を名乗るために必要な要素は大まかに5つあります。
1つ目が「自然仕立て」という、お茶畑でよく目にするようなかまぼこ状に刈るのではなく、名前の通り自然の状態で伸ばしっぱなしにする栽培方法で育てることです。「自然仕立て」を行うとお茶の樹が芽により多くの養分を送ることができます。
2つ目が手摘みで摘むということです。近年は機械化が進んでおり、収穫は機械で行えるようになりましたが、機械で摘むと葉が熱を持ってしまい葉の状態が悪くなってしまいます。しかし手摘みで優しく摘み取ると熱を持ちにくくなり、より美味しいお茶になるそうです。
3つ目が「間接被覆」を行うということです。碾茶や玉露は「被覆栽培」といって布を被せ、日を遮ることでうま味・甘味を引き出す栽培方法を取ります。その中でも品質の高い八女伝統本玉露はより高い保温効果を出すために、専用の施設を作って間接的に被覆を行う必要があるそうです。
4つ目が被覆を「すまき」で行うということです。一般的な玉露は化学繊維を用いて被覆しますが、八女伝統本玉露は藁を独自の方法で編んだ「すまき」を用います。山口さんによると、この「すまき」の素材を作ってくれるお店がもう1軒しかないそうです。この1軒が辞めてしまえば、「すまき」は無くなってしまうそうです。
5つ目が遮光率90%以上であるということです。これに関しては、認証のために実際に写真をつけて送る必要があるそうです。
このような厳しい基準をクリアしたものだけが八女伝統本玉露という名前で商品化されます。そもそも条件をクリアすることが難しい八女伝統本玉露ですが、さらに一番茶のみ収穫するため、収穫時期の関係でたくさんの面積を取れないことや、その収穫時期も数日間で価値が変化すること、天候に左右されやすいことなどの問題もあります。また、現在では高齢化に伴う生産者の減少や若手の摘み手不足などの問題もあります。山口さんの製茶園の摘み手さんは平均80歳で、中には90代の方もいらっしゃるそうです。
高齢化により農業者の人手不足が深刻になっているという現状は認識していましたが、お茶の生産において、ここまで大変な状況だとは思いもしませんでした。伝統を継続していくために人手は必要不可欠で、でもこの現状を知っている人は少ないです。私はより多くの人に八女伝統本玉露の素晴らしさと現状を知ってもらいたいと思いました。
フード・マネジメント学科1年 田中優羽