中村学園大学・中村学園大学短期大学部

西洋料理特別講演・料理示範 ~帝国ホテル第3代総料理長 杉本 雄氏~

2025年11月15日

本学では、学園祖中村ハル先生の「本物の味を知る」という教えを継承し、毎年、栄養科学部および短期大学部食物栄養学科の学生を対象に、「調理すること」への関心を高め、調理技術の向上を目指すための、料理のプロによる特別講演及び料理示範を行っています。
 
2025年10月4日(土)、本学にて、帝国ホテル 第3代総料理長・杉本雄氏を講師に迎え、特別講演および調理示範を開催いたしました。
杉本総料理長は1999年に帝国ホテルに入社し、2005年に退社しフランスへ渡りました。その後世界的な料理人たちのもとで経験を重ね、技術を磨いてこられました。2019年には第14代東京料理長に就任、そして2025年には第3代総料理長に就任されました。現在は、環境に配慮した食材選定や、サーキュラエコノミーを意識したレシピ開発・商品化を通じて、「おいしく社会を変える」という理念のもと、食を通じた社会貢献に尽力されています。
 
当日は久保千春学長の挨拶に続き、杉本総料理長による調理示範が行われました。実演されたのは、西洋料理の基本が凝縮された2品、南フランスの郷土料理「ブイヤベース」と、デザート「グランマニエのスフレ」です。
「ブイヤベース」では、香味野菜とともに煮込まれる魚介類に、南仏特有の食材であるフヌイユ(フェンネル)やパスティス(アニスと甘草をベースにした食前酒)を使用。魚介には、長崎・壱岐で水揚げされた未利用魚(カワハギやハタ、真鯛など)が使われ、市場で価値を見出されにくい魚にも丁寧に向き合い、その持ち味を最大限に引き出す調理が披露されました。杉本総料理長は「自然の恵みを活かすことが大切」と話され、食材の持ち味を引き出すために火入れでうま味を凝縮させる西洋料理の技法や、魚の扱い方のポイントを、実演を交えて丁寧に解説されました。
続く「グランマニエのスフレ」では、きめ細かなメレンゲを作るコツや、スフレがまっすぐ高く焼き上がる秘訣などを披露されました。基礎を大切にしつつ、美しさと精度を追求する姿勢に、学生たちは熱心に見入っていました。
 
講演後の質疑応答では、学生たちから多くの質問が寄せられました。
「伝統を守ることと新しいものを生み出すことは、料理における両輪である」
「限られた調理時間の中で、最大限の味を引き出すには、食材の大きさや扱い方を工夫する必要がある」といった、料理に対する深い洞察と哲学を交えた回答に、学生たちは大きな刺激を受けている様子でした。
また、杉本総料理長は料理に限らず、これから社会に出ていく学生たちへ向けて、
「うまくいかないことがあっても、自らの目的を見据え、何をすべきかを考え抜くことが大切」
「大変なことはつきもの。何度も挑戦し、ゴールを見つけていく姿勢が重要」
と、社会人としての心構えについても語ってくださいました。

杉本総料理長の高い技術と料理に対する哲学、そして温かなお人柄に触れたこの貴重な時間は、参加した学生たちにとって多くの学びと気づきをもたらす機会となりました。