中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
食べ残しゼロ

教えてくれたのは

    森脇 千夏
    食物栄養学科森脇 千夏教授

    中村学園大学家政学部食物栄養学専攻(現栄養科学部)卒業。中村学園大学院栄養科学研究科健康増進科学部門にて地域の(主に肥満・糖尿病予防)健康づくり活動について研究(栄養科学修士)。その後、別府大学短期大学部講師を経て、別府大学准教授、大分大学大学院医学研究科医学専攻にて博士(医学)を取得。肥満・摂食と脳機能との関連について研究。専門は公衆栄養学。現在は、付属幼稚園・おひさま保育園との共同研究のほか、東京栄養サミットにむけてJICA、ILSIJapanと共にミャンマー栄養改善事業に取り組んでいる。

中村学園大学付属おひさま保育園で行っている「食べ残しゼロ」の取り組みについて教えてください。
毎日の「食」を通して 子どもたちに元気を届けたい。 その思いでスタートしました。

以前は福岡市が提供する献立を使用していたのですが、“食の中村”の付属園として独自の献立を提供したいという思いがあり、園長先生にご相談して平成27年から「食べ残しゼロ」に向けた取り組みをはじめました。まずは一年間提供を行い、残食率のデータと照らし合わせながら振り返りを行い、データに基づいて改善していったのです。

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食べ残しを減らすにはどのような工夫が必要ですか?
大切なのは「なぜ残すのか」を知って その解決策を探っていくことです。

例えば、大人でも月曜日は「仕事に行きたくないな」と思ってしまいがちですが、それは子どもたちも同じ。毎日の食べ残しの量を記録することで、月・火曜日は身体的活動量が低くてお腹が空かないので残食率が高く、そこから週の半ばにかけて活動量は高く、残食量は低下するのですが、金曜日には疲れが出てまた残食率が高くなることがわかりました。そこで、月・火曜日は人気メニューを出し、食欲のある水・木曜日に噛む力を育てるメニューや新メニューを出す…といった工夫を行っています。その結果、平成27年では1.46%だった残食率が1年後には0.88%、2年後には0.41%にまで減少し、曜日による変動も見られなくなりました。

おひさま保育園でほかに実践していることはありますか?
子どもたちの「苦手」を理解することで さまざまな工夫を実践するようになりました。

データを見てみると、暑い時期に残食率が高くなっていることもわかりました。なぜだろうと考えていたのですが、子どもたちにとっては夏に温かい汁物を食べるのが大変なのだということに気づいたんです。また、口の中の唾液を奪われてしまうものが苦手で、中でもフライは子どもにとって食べづらいおかずであることがわかりました。口の中がモサモサしてしまうフライとパンの組み合わせだと、残食率はかなり高くなってしまうのです。子どもたちの苦手を理解することで、献立の作り方も変わりました。 また、イベント時の特別メニューについても、私たちが張り切りすぎてつい量が多くなってしまい、子どもたちが食べられないという現象が起きていることに気づいて…。1日の量を明確に定めるように改善しました。

保護者の方の反応は いかがですか?
自然と好き嫌いもなくなり とても喜んでいただいています。

おひさま保育園の子どもたちは野菜の味に慣れ、何でもよく食べてくれるようになるので、保護者の方は皆さんとても喜んでくださっています。調理室の前にその日の食事を置いていますが、お迎えの際に子どもといっしょに眺めながら「どれが好きだった?」、「おうちでも作れるかな?」と話されているそうなのでうれしいですね。忙しいお父さんとお母さんが多いので、調理室の先生方に「簡単に作れるレシピってありますか?」などの質問をいただくこともあります。

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