中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
コンビニのフードロス

教えてくれたのは

    土井 貴之
    流通科学部 流通科学科土井 貴之講師

    神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、修士(経営学)。兵庫県立洲本実業高等学校・神戸商業高等学校教諭を経て、2020年4月より現職。専門は財務会計で、授業は「アドバンスト簿記」「会計情報論」などを担当。著書として、「短期集中トレーニング日商簿記2級連結会計編」(単著、実教出版、2021 年)と「初学者のための経営学概論」(共著、同友館、2021 年6月刊行)がある。

コンビニにおけるフードロスはどのくらいですか。
おにぎり10個のうち1個は廃棄されています。

コンビニのチェーンや店舗によっても差はありますが、2020年度に公表された公正取引委員会の資料「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」によると、平均でコンビニ1店舗につき1日で198.6個のおにぎりを仕入18.9個が廃棄されています。また、お弁当は39個を仕入れ、5.2個が捨てられています。おにぎりや弁当などのデイリー商品は売上高の約25%を占めており、コンビニ業界にとってもフードロス問題は深刻といえます。

なぜコンビニでは大量のフードロスが生まれてしまうのでしょうか?
割引しづらいことがフードロスにつながっています。

コンビニには、本部が運営する直営店とフランチャイズ契約者が運営する加盟店がありますが、そのほとんどが加盟店です。本部は加盟店が獲得した利益に対して、ロイヤリティ(ロイヤルティ)を受け取るのですが、その利益を計算する際に、廃棄損や棚卸損(万引きなど)を除いて計算する「コンビニ会計」が原因のひとつです。また、「廃棄の出ない発注は商品が足りていないので、日に15,000円ぐらいは廃棄予算として考えてください」や「他の加盟店に迷惑がかかる」という指導があり、加盟店は割引販売できない現状に不満を抱えているようです。最近では割引が行われるようになってきましたが、人手不足から、割引シールを貼る作業がままならないという新しい課題に直面しています。

ほかにはどんなフードロス対策が行われていますか?
冷凍食品・チルド弁当の充実、賞味期限の記載方法などのさまざまな対策があります。

コンビニでは、冷凍食品を店内の目立つ場所に陳列したり、通常の弁当の5倍くらい長い消費期限(安全に食べられる期限)のあるチルド弁当の種類を充実させて廃棄する商品を減らそうとしています。コンビニに限らず、賞味期限(美味しく食べられる期限)の表示が、「年月日」だったのを「年月」になっている商品が増えてきました。
なお、製造してから賞味期限までの時間が1/3を過ぎた商品は小売店に納品することができないという商慣習が日本にあり、小売店に納品される前に廃棄されてしまう商品もあります。この期限がアメリカでは1/2、ヨーロッパでは2/3なので、日本も1/2くらいに緩和して、納品前のフードロスを減らそうという取り組みが始まっています。
フードロスは私たちにとって、とても身近な問題です。食品メーカーや、コンビニ等小売業者がこうした取り組みを進めることが大切ですが、私たちにできることもあります。例えば、買い物に行った際、つい賞味期限の長いものを選んでしまうという経験は皆さんもあるのではないでしょうか。それもフードロスを生み出す原因のひとつです。すぐに食べるものは賞味期限の近いものから選ぶといった、一人ひとりの心がけも対策になります。