中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
インクルーシブ保育・教育

教えてくれたのは

    福丸 奈津子
    短期大学部 幼児保育学科福丸 奈津子准教授

    鹿児島で小学校教諭として勤務。広島大学大学院教育学研究科後期博士課程単位取得退学(心理学)。2017年4月より福岡こども短期大学にて講師、准教授。2021 年4月より福岡女子短期大学こども学科 講師、准教授として勤めた後、2022 年4 月より現職。研究分野は教育心理学、発達心理学。

インクルーシブ保育・教育では、どういうものですか。
人々の多様なあり方を互いに認め合える共生社会を目指し、幼児児童生徒に行う保育・教育です。

インクルーシブには、包容する、排除しないなどの意味があります。違いを認め合い、協力し合い、尊重し合える全員参加型社会―共生社会を見据え、子どもたちに共生の感覚が自然に根付くように的確な指導を提供していくものです。障がいの有無を前提せず、人種的、性的などの少数派も含め対象は全ての子どもたち。少数派を多数派に合わせる、少数派を支援するという考え方ではありません。個々に優れた面があったり苦手とすることがあったり、一人ひとりが異なっていることを踏まえ、そのニーズに応じた保育・教育を行います。

インクルーシブ保育では、どういったことをしているのですか。
子どもたちが安心できる環境を整え、子どもたちが一つの尺度に縛られないものの見方や考え方ができるように導いていきます。

環境整備においては、医療ケアが必要な園への看護師の配置、障がいのある子どもがいる園への保育者の増員、外国籍の子どもに言葉を学ぶ時間を設けるなどの取り組みをしています。そもそもインクルーシブ保育は特別な活動とは捉えず、日常的に子どもの価値観が偏らないようにすることなどを大切にしています。例えば絵を描くのがとても遅い子には「もっと早くやりなさい」ではなく、「丁寧に仕上げているんだね」。一人ひとりを尊重した視点で声がけし、その場にいる子どもたちに多様な良さを認める感受性が養われるようにしていきます。

インクルーシブ保育のメリットを教えてください。
みんなが幸せな世の中になるはずです。よりよい社会を築き、持続させることができます。

究極的には「みんなが幸せ。みんなが生きやすい」世界になるでしょう。インクルーシブ保育によって、共に生きる文化の中で育った子どもが大人になった時、より良い社会を創る担い手になってくれるはずです。それはその子の次の世代にも引き継がれ持続していきます。今、自分の子どもにもしかしたら障がいがあるのではないかと、気に病んでいる保護者の方がいるかもしれません。ですが障がいの有無で分ける必要性がないインクルーシブ保育が浸透すれば、障がいの有無など気にしなくてもよくなります。大事なのはこの子に何が必要か、何に幸せを感じているかなどに目を向けることです。

インクルーシブに関して多くの人に伝えたいことは何ですか。
インクルーシブの本質はシンプルです。今すぐ誰もができることから広がって大きな輪になります。

インクルーシブと聞くと専門用語のようで難しく感じるかもしれませんが、本質はとてもシンプルです。家族や親しい友人も街で偶然会った人も、みんな違いがあると理解し、尊重し合いましょう。それは、保育や教育の専門家でなくても、自分や相手の年齢も関係なく、今すぐ誰にでもできることです。みんなで共生社会を創造していきたいですね。また、互いに理解し合うために、私はこういうことが好きじゃないとか、こうしてくれたらうれしいとか、自分から相手に伝えることも大事にしてください。