教えてくれたのは
中村学園大学大学院栄養科学研究科、九州大学大学院農学研究科博士課程修了。管理栄養士、博士(農学)。1999年4月より中村学園大学短期大学部食物栄養科(現食物栄養学科)講師を務め、2023年4月より現職。研究分野は栄養教育・栄養指導。授業では「臨床栄養学概論」「栄養指導論」等を担当している。
- ベジタリアンのカテゴリーのひとつであるヴィーガン(完全菜食者)の食のことです。その食材には、肉や魚はもちろん、卵や乳製品なども含まれません。
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ヴィーガンとはベジタリアンのカテゴリーのひとつで、肉や魚、卵、乳製品など動物性食品を一切食べない完全菜食者のことです。ヴィーガン食には、蜂蜜、魚を加工した鰹節なども使いません。ヴィーガン以外のベジタリアンには、乳製品は摂取するラクト・ベジタリアン、卵は摂取するオボ・ベジタリアン、乳製品および卵は摂取するラクト・オボ・ベジタリアンなどがあります。ヴィーガンは欧米諸国を中心に毎年1%近く増加していると言われています。
- 東京オリンピック開催決定を契機として、ヴィーガン食が注目されるようになったと思います。ヴィーガン食を取り入れる場合、宗教的信条、動物愛護、環境保護、健康づくりなど、さまざまな志向が背景にあります。
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東京オリンピック開催が決定したことを契機に、ヴィーガン食が注目されるようになったと思います。ヴィーガン食を取り入れる主な背景として、ヒンドゥー教では肉食を禁止または回避するなど宗教的な理由、動物を殺生したくないなど動物愛護、畜産業拡大による森林破壊の防止など環境的な配慮、健康の維持増進などがあります。例えば、牛肉1kgの生産に必要な穀物の量は、とうもろこしで換算すると11㎏と言われており、畜産物の生産量維持のためには広大な農地が必要となります。
- 生活習慣病の予防や改善の可能性、アレルギー除去食として活用できることなどがメリットとして考えられます。
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生活習慣病増加の原因の一つとして、動物性食品(特に肉類)の過剰摂取があげられるため、ヴィーガン食はその予防・改善に役立つのではないかと考えられます。また、食物アレルギーの原因となる卵や牛乳を使わないため、卵および牛乳アレルギーの除去食としても活用できるでしょう。その一方で、ビタミンB₁₂が植物性食品にはほとんど含まれないことから、ヴィーガン食ではビタミンB₁₂の不足が心配されるという面もあります。植物性食品である海藻にはビタミンB₁₂を含んでいることから、ヴィーガン食の場合には海藻を摂取することが大切です。
- 主食であるご飯を中心に、発酵食品(味噌、漬物など)、旬の野菜、大豆・大豆製品、海藻、乾物、種実などを摂取していきましょう。
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「動物性の食品以外であれば何でも良い」と考えていると、栄養不足が生じる危険があります。主食であるご飯を中心に、発酵食品(味噌、漬物など)、旬の野菜、大豆・大豆製品、海藻、乾物、種実などを摂取していきましょう。精白度の高いお米の場合は雑穀を混ぜて炊くことで、ビタミンやミネラル、食物繊維を補うことができます。発酵食品である味噌、漬物、甘酒などは、腸内環境を整えてくれますので、毎日摂取していきましょう。甘酒を砂糖の代わりにお菓子作りに使用すると、お菓子を楽しみながら甘酒を摂取できます。主菜には、板麩や車麩などの乾物、雑穀を活用してみてください。調理方法を工夫すると、肉料理のような感覚のヴィーガン料理を楽しむことができます。