中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
家族介護と地域包括ケアシステム

教えてくれたのは

    木場 千春
    短期大学部 幼児保育学科木場 千春講師

    熊本県立大学大学院アドミニストレーション研究科博士後期課程修了。博士(アドミニストレーション)。西九州大学健康福祉学部社会福祉学科にて、助手、助教、講師を経て准教授および西九州大学大学院生活支援科学研究科博士前期課程准教授として勤めたのち、2024年4月より現職。研究分野は社会保障。本学では「社会福祉」「施設実習指導」等担当。

家族介護の実態や問題点などを教えてください。
核家族化・共働き世帯の増加で家族介護が難しくなっています。それでも家族による介護は続いており、介護する側も高齢である「老老介護」や介護する側にも認知症の症状がある「認認介護」の問題も起きています。

介護保険制度が普及し在宅サービスが整備されてきて、地域で暮らし続けるための基盤が整いつつある状況ですが、家族介護をゼロにすることはできません。家族による介護には、精神的・身体的・経済的にかなりの負担を伴います。仕事をしながら介護をする人もいますし、介護者自身が高齢に達しているケースも多いです。家族に介護されたい、家族で介護したいと希望しても、仕事との両立や身体的・精神的負担のため、実際には家族介護が難しいという問題も出てきています。

地域包括ケアシステムとはどういうものですか。
少子高齢化に伴う諸問題(特にケア問題)の解決策として目指されている政策理念で、大きな括りでは社会を持続可能にするためのものといえます。

地域包括ケアシステムは、たとえ重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域で本人が希望する生活を続けていくための方策として生まれました。高齢者ケアの分野から発展してきましたが、現在では、虐待や引きこもりなど地域に潜んでいる課題の解決を含め、あらゆる人々が「地域で共に生きる社会」を実現するための仕組みとも位置づけられ、各自治体に総合相談窓口である地域包括支援センターが設置されています。包括ケアとは、住まいを基盤に、医療・介護・福祉サービスが一体的に提供され、生活支援も含んだ支援であるため、地域住民の参加と協働が求められます。

地域包括ケアシステムにおける家族介護の支援の現状を教えてください。また、これからどんな支援や制度が必要なのでしょうか。
訪問介護、通所介護などの支援が実施されています。今後は相談窓口の普及や包括的な支援体制の強化がよりいっそう求められます。

仕事と介護の両立支援は大きな課題で、デイサービスやショートステイなどの在宅サービスを活用することで、介護者は仕事をしながら介護ができたり、休息をとったりすることができています。今後、介護者が仕事を持つ・持たないに関わらず、介護負担を軽減する支援が鍵になるでしょう。家族にとって身近な相談窓口の普及や包括的な支援体制の強化がよりいっそう重要だといえます。また、介護者への金銭給付という支援も検討の余地があるでしょう。

家族介護は誰にとっても他人事ではないと思いますが、その時のためにどのような準備をしておけばいいでしょうか。
介護・福祉の制度を知っておくこと、家族と日頃からコミュニケーションをとっておくことが大切です。

介護をするにあたり、活用できる制度を知っておきましょう。加えて、あらかじめ本人の希望を知っておくことも重要です。要介護状態になった時に、誰に、どこで介護してほしいかを家族と話し、どこまでお世話ができるか、お互いに共通認識を持っておくといいですね。家族による介護が難しい人は、在宅サービスを利用し、地域の人の支援を受けながら、安心して老後を送ってほしいです。誰もが日頃から、自分もいつか支えられる側になるという意識を持って生活していくことも大切だと思います。