中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
乳がん

教えてくれたのは

    脇本 麗
    短期大学部 食物栄養学科脇本 麗講師

    中村学園大学家政学部食物栄養学科管理栄養士専攻(現栄養科学部栄養科学科)卒業後、中村学園大学大学院栄養科学研究科栄養科学専攻博士後期課程を修了。管理栄養士、博士(栄養科学)。中村学園大学栄養科学部および他の短期大学にて助教、講師、准教授を歴任し、2023年より現職。研究分野は栄養学、健康科学。「基礎栄養学」「栄養・生化学実験」などを担当している。

乳がんはどのような病気で、どういった症状が見られますか。
乳がんは乳腺の組織にできるがんで、乳房にしこりができるなどの症状が見られます。

乳がんは、乳汁を産生する器官である乳腺に発生する悪性腫瘍です。女性ホルモン(エストロゲン)が関与するタイプが約7割を占め、遺伝的要因などによるさまざまなタイプがあり、まれに男性が罹患することもあります。症状としては、乳房にしこりができたり、乳頭にただれが見られたり、分泌物が出たりすることがあります。ただし、これらの症状があっても、乳腺炎などの良性疾患である場合もあります。乳がんは早期に発見して治療を行えば、比較的治りやすいがんとされています。そのため、早めの受診や定期的な検診が重要です。

乳がんはどのようにして発症し、どんな人がかかりやすいのですか。
どのように発症するかはまだ明らかになっていませんが、女性ホルモンにさらされる期間が長いこと、閉経後の肥満、過剰な飲酒などが、発症リスクを高める要因として知られています。

乳がんがどのように発症するかはまだ明らかになっていませんが、発症リスクを高める要因はいくつか分かっています。たとえば、初潮年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産経験がないなど、女性ホルモンにさらされる期間が長いことがリスクとして挙げられます。また、閉経するとエストロゲンが分泌されなくなるため乳がんのリスクが減るように思われますが、エストロゲンは体脂肪組織でも生成されるため、閉経後の肥満は乳がんのリスクを上げる原因になります。そのほか、過剰な飲酒、乳がんの家族歴、運動不足なども発症に関係しています。ただし、これらの条件に当てはまるからといって、必ず乳がんになるわけではありません。乳がんの罹患率は40代後半でピークを迎え、閉経とともに一度減少しますが、60代後半から70代にかけて再び増加します。

他のがんと比べての特徴や現状などについて教えてください。
乳がんはセルフチェックによって早期に発見できることが特徴の一つです。女性が罹患するがんの中で最も多く、その罹患率は年々増加傾向にあります。

乳がんは他の内臓のがんと異なり、体の表面近くにできるため、自分で乳房を触ったり見たりすることで異変に気づくことができます。そのため、定期的なセルフチェックが推奨されています。治療法としては、手術、放射線治療、薬物治療などが一般的です。乳がんは日本人女性が罹患するがんの中で最も多く、罹患者数は約9万人にのぼります。日本の乳がんは他国よりは少ないですが、年々増加しています。その原因のひとつとして、ライフスタイルの欧米化による食生活の変化が考えられています。

乳がんを予防するにはどうしたらいいですか。
栄養バランスのいい食事やフィトケミカルが含まれる果物や野菜の摂取、適度な運動など健康的な生活習慣を心がけましょう。

乳がん予防には、節度ある飲酒、禁煙、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、適正体重の維持など、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。私は現在、ブルーベリーなどに含まれる植物由来の生理活性物質(フィトケミカル)の『プテロスチルベン』に着目し、予後が悪いとされる『トリプルネガティブ乳がん』細胞に対する抗腫瘍効果のメカニズムについて研究しています。フィトケミカルを含む果物や野菜(ブルーベリー、ブドウ、柑橘類、緑黄色野菜など)の摂取は、乳がんのリスクを下げる効果が期待されており、積極的に取り入れたい食品です。ただし、果物の過剰摂取は糖分の摂りすぎによる肥満につながる可能性があるため、適量を守ることが大切です。