中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
食肉

教えてくれたのは

    中川 隆
    流通科学部 流通科学科中川 隆准教授

    2005年九州大学大学院博士(農学)の学位を取得。帯広畜産大学COE研究員、別府大学国際経営学部准教授などを経て、2016年より中村学園大学流通科学部准教授。授業では「食品流通論」「ミクロ経済学」などを担当。食農資源経済学会、日本フードシステム学会、日本流通学会、地域デザイン学会などに所属。2010年より独立行政法人農畜産業振興機構(alic)の専門調査員。

「和牛」と「国産牛」はどう違うのですか?
「和牛」は明治以前から日本で飼われてきた肉専用種で、
「国産牛」の多くはホルスタインの雄を指します。

「和牛」とは日本の在来種を交配させた牛、「国産牛」とは多くの場合、オランダ原産の外来種であるホルスタイン(乳用種)の雄を指します。和牛の出荷月齢は約30ヶ月と、ホルスタインの雄の約20ヶ月に比べて育成・肥育される期間が長く、手間とコストをかけて生産されます。近代以降、和牛の改良が重ねられ、肥育農家の努力により、世界に名だたる品質の良い和牛が生まれました。

  • 健康志向から、赤身の多い国産牛を好む消費者も増加傾向に 健康志向から、赤身の多い国産牛を好む消費者も増加傾向に
輸入牛の安全性について教えてください。
牛肉輸出大国のオーストラリアなどでは
家畜の段階から品質を管理。
国際基準の品質管理が徹底されています。

我が国の牛肉の自給率は約40%で、残りの60%はオーストラリアやアメリカなどからの輸入牛です。これらの輸出先進国は安全加工、品質管理にも力を入れており、国際基準の条件をクリアしたものだけが日本に輸出されています。オーストラリアでは肉牛の飼育段階から牛のストレスを減らすように配慮した「キャトルケア」と呼ばれる品質管理システムを構築し、普及が進められています。安全な牛肉を供給するために、海外でも品質管理は徹底されています。

ブランド牛に関するトレンドを教えてください。
米を餌にして育てた「えこめ牛」など、さまざまな
牛肉のブランド化が進んでいます。

最近は牛肉のブランド化が多様に進み、九州では米を飼料にして肥育した熊本県の「えこめ牛」、大分県の「豊後・米仕上牛」などのブランド牛が誕生。飼料用米で家畜を肥育すると、肉脂肪中のオレイン酸の割合が高くなるという研究結果も出ており、健康志向の消費者の注目を集めています。また、米の他にも焼酎粕や酒粕など地域の食品産業で発生する副産物を地域資源として飼料に活用する事例も増加。海外の飼料穀物依存の畜産から転換したブランド牛を育成する気運が高まっています。

農畜産業の6次産業化とは?
いわゆる「農家レストラン」のような、
生産から販売まで業務を展開することです。

6次産業の「6」とは1×2×3のことで、一次産業に携わる農業者が、二次産業である加工業・製造業、そして三次産業の小売・レストランまで手掛けることを6次産業化といいます。例えば福岡でいうと、今宿にある「堀ちゃん牧場」。牧場の敷地内にレストランがあり、豊かな自然にふれながら博多和牛を味わうこともできます。どんな風に育てられたのかを知り、その場で食べられる農家レストランは食育の一環としてもおすすめです。

  • 「堀ちゃん牧場」では博多和牛の肥育が行われている。 「堀ちゃん牧場」では博多和牛の肥育が行われている。
  • 敷地内に併設されたレストランで、美味しい和牛を堪能。 敷地内に併設されたレストランで、美味しい和牛を堪能。