教えてくれたのは

中村学園大学家政学部児童学科(現教育学部)卒業、保育者として保育現場に勤務しその後、福岡教育大学大学院教育学研究科教育科学専攻修士(教育学)取得。専門は、幼児教育、保育学。授業では、「教職研究」「保育所実習研究」を担当。現在は、研究の一貫として幼稚園の子どもに残さず食べる大切さを伝える食育を行っており、子どもたちと野菜を育て食す活動を実践中である。
- 味覚の形成には食欲や嗜好が関係しており、
経験によって発達します。 -
人は生まれた時から味の識別能力があり、子どもの味覚は就学前に9割完成します。甘味・塩味・旨味・酸味・苦味は乳児から感じます。母乳の中には甘味、塩味、旨味が入っていて、赤ちゃんは本能的に飲むことができます。酸味や苦味は腐ったもの・危険なものとして察知し、初めは本能的に嫌がりますが、離乳期に親がおいしそうに食べる姿を見て、苦味がある食材も安全なものと認識し、子どもも食べることができるようになります。周りの大人が「おいしいね」といって食べさせることや色々な味の経験を増やすことで、子どもの味覚は形成されます。
どうすればよいですか?
- 身近な大人がおいしそうに食べることや、
苦手な食材を育て、食べる体験活動が効果的です。 -
子どもが苦手な野菜に興味を持つには、自分で育てて食べる経験が効果的です。育てたトウモロコシを見て、毛が多くついたものには身がぎっしり詰まっていることや、ナスのへたをめくると白いことに気づきます。その理由を調べることで、さらに野菜に興味を持ちます。調理や手伝いも子どもが食に興味を持つきっかけになります。園では、育てた野菜を使ってカレー作りを行っています。2歳児は野菜を洗い、3歳児は米を研ぎ、4歳児は野菜の皮を向き、5歳児は野菜を切り、みんなで協力して作ると苦手な野菜を食べることができます。野菜を育て、調理することで食べ物の大切さや作り手への感謝の気持ちが生まれます。
立派に育ったナスを収穫。自分で育てるとおいしさも倍増!
力を合わせてカレー作り。子どもたちの表情も真剣です。
- 生活の中のふとした気づきから、
興味を持たせることが大切です。 -
味噌や梅干しなど日本の伝統食品は、昔は家庭でも作られていましたが、今ではそういった機会も少なくなっています。食育の一環として、子どもたちと梅干しを作る園もあります。春に散歩をする際、「梅の花が咲いたね」と子どもに声掛けをすると、5月には「実がついてきたよ」と自分から変化に気づきます。特別な行事ではなく、日々の保育の中で興味を持たせ、梅干し作りに繋げます。実際の梅干し作りでは、子どもはシソが鮮やかな色になることに驚き、自分で作った梅干しを飯盒で炊いたごはんにのせて食べると、おいしさに目を輝かせます。このような経験を子どもが親に話すことで梅干しを漬ける家庭も出てきます。
みんなで梅干し作り体験。シソの葉を丁寧に1枚1枚ちぎります。
梅に塩をまぶします。どうやって赤い梅干しになるのか興味津々。