中村学園大学・中村学園大学短期大学部

顧客満足を満たすものとは? マネジリアル・マーケティングで 企業や地域の活性化を目指す。
流通科学部 流通科学科片山 富弘 教授
PROFILE学術博士・税理士・中小企業診断士。関西大学経済学部卒業後、慶応義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。大手メーカーにて商品企画、経営企画、経理部を担当。横浜市立大学大学院商学部経済学研究科にて修士(経済学)を取得、佐賀大学大学院工学研究科にて博士(学術)を取得。マーケティング・マネジメント論担当。
ゼミ生とともに、唐津市にある2つの島の活性化プロジェクトを手掛ける片山富弘教授に現在の活動内容についてお話を伺いました。
先生の研究分野について教えてください。
 私はマーケティング・マネジメントの分野を専門にしており、中でも経営者やスタッフの立場に立った「マネジリアル・マーケティング」について研究を進めています。2004年に出版した「マネジリアル・マーケティングの考え方と実際」が日本消費経済学会で奨励賞を受賞。これを皮切りに、企業や自治体から調査依頼を受けるようになりました。ソフトバンクホークスの集客戦略、NTTドコモの利用促進提案、呼子町の朝市改善など、いかにその商品を売るか、顧客満足度を高めるかについて調査・提言してきました。福岡商工会議所からの依頼で「九州観光マスター」という検定試験を立ち上げたこともあります。「九州」という商品をいかに地域の人に知ってもらうかという、マーケティングの要素を含んだ仕事で、とても苦労しましたが、やり甲斐がありましたね。
マーケティングに興味をもったきっかけは?
 学生時代は経済学部に在籍していましたが、あまり経済に興味がなくて。そんな時にマーケティングの本に出会ったんです。とてもわかりやすい内容で、自分で日本の金利を数パーセント上げる・下げるなんてことはできないけれど、マーケティングだったら自分でもやれることがあるんじゃないかと思って。これは実践的だし、身につくことがありそうだなというのが最初の印象でした。
 それから企業に就職、経営企画の部署に属して、経理部門も経験。「こうすれば企業って利益が出るんだ」という、その時の実体験が今でも生きているなと感じることはありますね。
きれいごとになるかもしれないけどこのプロジェクト活動が社会貢献につながってるのかなと思うと、やりがいを感じますね
先生が手掛けているマーケティングの特徴を教えてください。
 私は中小企業診断士の国家資格も取得しているので、どちらかというとコンサルティングの要素が強いといえます。現象を分析して、仮説検証し、最後に商品を作ってそれを販売促進につなげていくやり方です。一般的にマーケティングというと、データを収集して「こんなことがわかりました」という報告で終わるのですが、それだけではその先がないんですよ。データをもとに「ではこれからどうすればよいか」を一歩踏み込んで解決していく。それが私のマーケティングの特徴かなと思っています。
研究成果を記した著書の20数冊の一部。「自分の生きてきた証として、たくさんの本を残していきたい」。
現在、取り組んでいるプロジェクトは?
 唐津市からの依頼で、加唐島と高島、2つの島の活性化プロジェクトを進めています。まず現地の実態調査として、開発する商品に類似したものがないかを調べたり、近隣の島を見学したり。何度も足を運んで調査するので、週末の休みはほとんどない状態です。このプロジェクトはゼミの学生も巻き込んだ、まさにアクティブラーニングとなっていますね。島の活動を通じて、学生が社会と接しながら成長していく姿を見るのはとても喜ばしいことです。お年寄りと話すのも苦手だった学生が島の人たちとふれあいながら、オリジナルのバッグやタオルの商品開発、動画制作などを行いました。発表会で島の人たちが涙してくれたりする姿を見て私も感激しました。
猫の島として有名な加唐島のキャラクター「かかにゃん」を学生が考案。愛らしいイラストを使ったグッズは大好評!
今後の目標について教えてください。
 やりたいことはまだまだたくさんあります。研究室にこもって本も書いてみたいし、もっといろいろな地域や企業の人たちに「マーケティングってこんなに面白いし、活かしていけるんだよ」っていうことを伝えていきたい。特に私の場合は、学生たちにマーケティング・マネジメントをわかりやすく提供するのが使命だと思っています。マーケティング自体もどんどん変化を遂げていますが、新しい手法も追いかけながら、古いものも活かして、研究を続けていきたい。私自身、社会に生かされていますが、もっと地域の中に溶け込んで、社会貢献につながっていけるといいなと思います。
高島のみなさんとゼミ生たち。高島ではご当地グルメ「高島バーガー」を提案、集客アップを図った。