中村学園大学・中村学園大学短期大学部

研究内容

1.はじめに

急速に少子高齢化が進行する日本において、医療介護ニーズは増大し、医療技術の高度化により医療費は40兆円と高騰している状態にあります。そのため、病気になる前に病気の原因を除去し、健康増進・維持を図ることで病気の発生を防ぐ一次予防が重要視されています。

未病とは、発病には至らないものの軽い症状がある状態を示しています。未病には、自覚症状はありますが検査では異常が見つかり難い東洋医学的未病と、自覚症状はありませんが検査で異常がみられる西洋医学的未病があります。厚生労働省が実施している国民健康・栄養調査の報告結果(平成30年)によると、内蔵脂肪型肥満の成人は22.2%と報告されており、成人の5人に1人は、内臓脂肪型肥満であることが報告されています。また、日本においては、過栄養の肥満だけでなく、栄養欠乏による低栄養も大きな問題になってきています。さらに、少子高齢化が進行していることからアルツハイマー病、骨粗鬆症を始めとした老年病の未病状態の人口が増えてきていることが考えられます。

本研究所では、中医学を基礎とした薬膳の考えに、伝統的な日本の食文化を融合させた健康モデル食「日本型薬膳」を開発・提唱しており、「日本型薬膳」を活用することで人々の健康増進・維持に貢献できると考えています。本部門では、本研究所が開発・提唱している「日本型薬膳」の健康増進・維持効果(機能性)をヒトならびに動物を対象とした実験手法を用いて生体応答性を科学的に評価することを目的としています。生体応答性を評価するうえでは、生体の恒常性維持として現れる表現型を検討するだけでは、不十分になってしまいます。そのため、分子栄養学部門で共同し、個体、細胞、分子レベルから表現型を多角的に解析し、得られた知見のメカニズムを明らかしたいと考えています。「日本型薬膳」によって誘導される応答の制御機構を明らかにすることは、最終的に管理栄養士の食事指導に活用できるエビデンスの蓄積になると考えています。

近年、腸内環境と疾病の関連が明らかにされてきており、腸内環境を正常ならびに良好な状態に保つことがヒトの健康の保持・増進に関連していることが明らかにされています。事実、腸内環境は、加齢とともに変化することが分かっています。腸内細菌は、下部消化管腔内に1,000種類、100兆個棲息しており、これらは宿主へ直接もしくは間接的に影響を与えてヒトと共存しています。腸内環境の正常化もしくは、良好な状態を維持する食品素材には、プロバイオティクスのような生菌食品ならびにプレバイオティクスのような食物繊維を始めとした難消化性糖質があります。腸内細菌は、ヒトが上部消化管腔内で消化・吸収することができなかった食物残渣の中の糖質や脱落細胞などから、短鎖脂肪酸を始めとした様々な代謝産物を合成し、それらは下部消化管からエネルギー源ならびに生理活性物質として吸収・利用することで宿主の健康の保持・増進に寄与しています。生体応答部門では、薬膳素材の摂取後の腸内細菌が下部消化管腔内で合成する二次代謝産物に着目し、アルツハイマー病ならびに骨粗鬆症病などの老年病や糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病に予防効果を示すかどうか動物実験を中心に評価したいと考えています。

2.研究テーマ

近年、腸内環境と疾病の関連が明らかにされてきており、腸内環境を正常ならびに良好な状態に保つことがヒトの健康の保持・増進に関連していることが明らかにされています。事実、腸内環境は、加齢とともに変化することが分かっています。腸内細菌は、下部消化管腔内に1,000種類、100兆個棲息しており、これらは宿主へ直接もしくは間接的に影響を与えてヒトと共存しています。腸内環境の正常化もしくは、良好な状態を維持する食品素材には、プロバイオティクスのような生菌食品ならびにプレバイオティクスのような食物繊維を始めとした難消化性糖質があります。腸内細菌は、ヒトが上部消化管腔内で消化・吸収することができなかった食物残渣の中の糖質や脱落細胞などから、短鎖脂肪酸を始めとした様々な代謝産物を合成し、それらは下部消化管からエネルギー源ならびに生理活性物質として吸収・利用することで宿主の健康の保持・増進に寄与しています。生体応答部門では、薬膳素材の摂取後の腸内細菌が下部消化管腔内で合成する二次代謝産物に着目し、アルツハイマー病ならびに骨粗鬆症病などの老年病や糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病に予防効果を示すかどうか動物実験を中心に評価したいと考えています。

1. 実験動物を用いた食品素材の発酵性のスクリーニング試験

消化・吸収を免れて大腸へ到達した食物残渣は、腸内細菌によって水素ガスを産生し、最終的には、呼気ガスに排泄されます。水素ガスは、腸内細菌による発酵でしか産生されません(図2)。つまり、水素ガスは、ヒトの体内では産生できないため、腸内細菌による発酵の指標となります。水素ガスの呼気への排泄量の増加は、腸内細菌による発酵と強く関連しており、発酵性が高いことは、腸内細菌による二次代謝産物の合成・産生が盛んになっていることを示しており、生体調節機能を発現する可能性が高いことを示します。本研究テーマでは、実験動物を用いて薬膳素材を始めとした食品素材の発酵性について水素ガスを指標として発酵性のスクリーニングをしたいと考えています。

2. 疾患モデル動物を用いた生体調節機能の評価試験

発酵性が確認された食品素材の単回摂取、もしくは、継続摂取を実験動物で実施し、下部消化管腔内の腸内細菌による二次代謝産物の産生量を検討するだけでなく、表現型の影響を評価したいと考えています。また、分子栄養学部門と共同し、細胞、分子レベルから多角的にそのメカニズムを解明していくことが本研究テーマの目標です。