中村学園大学・中村学園大学短期大学部

研究内容

近年、高度先端技術によって多くの未知の腸内細菌の同定が可能となり、腸内細菌の全容が少しずつ明らかになってきた(図1)。その結果、腸内細菌がヒトの健康維持・増進に深く関与していることが判明した。腸内細菌の中でビフィズス菌、乳酸菌はよく知られている菌であるが、30年以上前に乳酸菌摂取が血清コレステロール値を低下させることがすでに報告されており、腸内細菌と生活習慣病には関連があることが示唆された。そしてここ数年の間に、腸内細菌が肥満や糖尿病に深く関わっていることを明らかにした研究成果が次々に発表されている。

日常の食生活は腸内細菌叢に影響するが、ここからプレバイオテイクスという概念が生まれた。プレバイオテイクスとは、「腸内の有用菌の増殖を促進させたり、有害菌の増殖を抑制し、その結果、腸内浄化作用によって宿主(ヒト)の健康に有利に作用する難消化性食品成分」のことである。プレバイオテイクスの代表はオリゴ糖や食物繊維。また、私達は日常の食生活でビフィズス菌や乳酸菌を含むヨーグルトなどを摂取するが、「腸内常在菌のバランスを変えることにより、宿主(ヒト)に保健効果を示す生きた微生物」をプロバイオテイクスという。直接有用菌を摂取することで簡便に腸内細菌叢を変化させることができる。プロバイオテイクスには降圧作用、コレステロール低下作用、発がんリスク低減作用など生活習慣病予防に大きな役割を果たすことが期待されている。

このように腸内細菌叢は健康増進に重要な役割を担っていることが明らかになりつつあり、薬膳の健康効果を腸内細菌叢の変動で検証できないかという仮説をたて、現在腸内細菌叢の研究を中心に取り組んでいる。研究テーマとして、(1)日本人の腸内細菌叢の記述疫学的特徴、(2)長寿地域(沖縄県伊江村、鹿児島県奄美大島)と非長寿地域の小児の腸内細菌叢の比較研究、(3)食生活を含む生活習慣、及び体質と腸内細菌叢の関連の疫学研究、(4)腸年齢の妥当性とその健康影響に関する疫学研究である(図2、3)。