中村学園大学・中村学園大学短期大学部

テーマ
生成AI

教えてくれたのは

    姉川 正紀
    流通科学部 流通科学科姉川 正紀教授

    長崎大学大学院博士後期課程を単位取得後退学。博士(工学)。長崎大学、大分工業高等専門学校での勤務を経て、2003年に本学に着任。専門は知能情報学、学習支援システム、感性情報学。学生時代(学部・修士)におこなっていた、ニューラルネットワーク研究などの知見を基に、生成AI時代における「技術と人間の共生」や在り方を模索。「Python」の授業中に「機械学習」の基礎なども指導している。

生成AI(以下AI)が急速に普及していますが、大学での学びや就職活動において、AIはどのような影響を与えていますか。
学生が学業にAIを活用するのは当然となっていますが、適切に使用することが大事だと指導しています。

 AIは学習効率を飛躍的に向上させてくれます。学生には積極的なAIの利用を推奨すると同時に適切に使うことを指導しています。一方で、世の中の動向に目を向けると、レポートなどを作成する際、AIに丸ごと代筆させるケースが問題視されています。教員が、AIの文章特有の特徴を検出し人間が書いた文章との違いを識別する「AI検出ツール」を使ってチェックを行う大学も増えています。しかし、すでにAIの文章を人間が執筆した文章らしく直してくれるサービスも登場しています。
 また、就職活動の現場でも、AIを利用してエントリーシートを作成する学生が増え、その内容が均質化して評価することが難しくなったなどの理由で、エントリーシートによる書類選考を廃止する動きをみせる企業もあります。

AIの浸透は仕事やキャリアにどんな影響を与えますか。
エントリーレベルの仕事が次第にAIに置き換えられていくなど、働き方やキャリア形成は大きく変わろうとしています。

 アメリカではホワイトカラーの仕事が減少し、AIに代替されにくい肉体労働(ブルーカラー)の価値が見直されており、日本も段々とそうなるかもしれません。しかし、箱の積み降ろしをするなど様々なタスクを学習したヒューマノイド型ロボットの開発により、将来的には肉体労働の代替も進むと予想されます。
 当初、クリエイティブな職種は生き残るとされていましたが、例えば簡単な構図をアップロードすればそれをAIが完成度の高いイラストに仕上げてくれるなど、クリエイティブ分野にも影響を与えています。
 学生にとって特に危惧されるのは、新卒が最初に担うようなエントリーレベルの業務がAIに置き換えられつつあることです。これは入社して簡単な業務から始めてステップアップしていくという、従来の新入社員向けの育成プロセスが失われていくことを意味します。

AIの活用が広がることでどんな懸念点がありますか。
誤った情報を鵜呑みにしてしまうリスクや、ディープフェイク(偽の画像や動画、音声)を使ったプライバシーの侵害や犯罪です。

 AIは計算ミスやハルシネーション(実際には存在しない、あるいは間違った情報を生成する)を起こすことがあります。検索結果のトップにAIの回答が表示されることでソースを確認せず、何の疑いもなくAIの答えを鵜呑みにし、誤った情報を信じてしまうというリスクも懸念されます。
 また、特に注意したいのが、個人の顔写真や声を加工したディープフェイク(偽の画像や動画、音声)によるプライバシーの侵害や、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の巧妙化にも警戒が必要です。個人情報の管理やリテラシーへの意識を高めることが求められます。

AIを使いこなすために、学生が身につけておくべきことは何でしょうか。
AIに振り回されるのではなく、AIを使いこなすためには、基礎的な学力が大切です。また、パソコンのタイピングスキルも磨いてほしいと思います。

 AIに的確に指示を出せてAIの回答を正しく判断し、使いこなすためには、論理的思考や倫理観、文章力といった基礎的な学力が欠かせません。例えば、電卓が普及しても小学校では必ず算数の基本となる九九を学びます。AIに関しても同様で、基礎的な知識がなければ、AIの回答が正しいのかを客観的に判断することも難しいでしょう。
 また基本中の基本といえるのが、パソコンのスムーズな操作に欠かせないタイピングスキルです。若い世代はスマートフォンの文字入力がメインになっていますが、AIの到来によってキーボード入力の重要性がますます高まっています。脳の信号を読取る技術(BCI: Brain-Computer Interface)などが実用化されるまでは、キーボード入力が必要なのかもしれません。